Shawn Lim
2022年10月28日

ロレアルが進めるコンテンツとコマースの統合

化粧品大手のロレアルは、オンラインサービスを使いやすくするだけでなく、より没入感も高めながら、新しいコンテンツに対する爆発的なニーズの高まりに応えようとしている。

ロレアルが進めるコンテンツとコマースの統合

消費者はデジタルライフを受け入れてはいるが、買い物に関しては、実世界の要素をある程度取り戻したいと望んでいる。

最近実施されたた調査によれば、消費者の46%が実店舗で購入するのを好むと答えた一方で、30%は欲しいものはほぼすべてオンラインで購入していると回答した。25%は両者の中間だった。

ブランドは、消費者の要望に応え、適切な顧客体験を提供するため、こうした動向をリアルタイムで読み解こうとしている。

ロレアルはEコマースの進化に伴い、コンテンツニーズの爆発的増加に直面している。フランスの化粧品大手ロレアルのデジタル担当グローバル責任者、アン・ギシャール氏は、2022年、DX支援企業のサイトコアのシンポジウムにパネリストとして招待され、そう語った。

コンテンツの複雑化

新たなニーズの多様化により、もはや商品ページのトップに美しい大判写真を掲載するだけでは不十分になった。増え続けるソーシャルプラットフォームに対応する必要があり、各プラットフォームにはそれぞれ独自のフォーマットがあると、ギシャール氏は言う。

「消費者は複数のプラットフォームで情報を探そうとする。ここに、私たちが『メッシー・ミドル(中層の混沌)』と呼ぶ、消費者ジャーニーの複雑化の要因がある。メッシー・ミドルによって、消費者が求めるコンテンツを、多様なプラットフォームごとに制作する必要性が生まれた」と、ギシャール氏はサイトコアの最高マーケティング責任者、ペイジ・オニール氏に語った。

「私たちは、美のパーソナル化やユニバーサル化にも力を入れている。業界バランスは多様性とインクルージョン(包摂性)を向上させる方向にシフトしており、ある地域で商品やコンテンツを展開するときには、その地域の文化に合わせて表現を調整している」(ギシャール氏)

ロレアルは現在、35のブランドで220万もの商品を抱え、消費者に提供するサービスは1000万種類以上に及ぶ。これらの大規模なコンテンツの管理のため、ロレアルが抱える仕事の量は膨大なものとなる。

ギシャール氏によれば、ロレアルのウェブサイト上のコンテンツへの訪問回数は10億を超える。したがって、同社がイノベーションを考えるときには、優れたアイディアをウェブサイト上でどう表現できるか、そして、どうすればその規模を拡大できるかを考慮することが必要になる。

「私たちは自社制作したコンテンツやサービス、そして傘下のD2C(direct-to-consumer)ブランドを管理するため、インフラを構築した。また、これらの効果を測定するための管理ツールも用意した」と、ギシャール氏は説明する。

「面白いことに、私たちは毎年新しいタイプのコンテンツに適応してきている。最新の例としては、ライブストリーミングが挙げられる。現在、我々はアジアの消費者に向けて、数千時間に及ぶライブストリーミングのコンテンツを制作している」(ギシャール氏)

多様な消費者とつながりを築くため、ロレアルは消費者がコンテンツの発見までにたどる経路にも注目している。入り口が、Google検索なのか、商品に付けられたQRコードなのか、ソーシャルプラットフォームなのかといった点だ。

しかし、どのような経路をたどるにせよ、最終的にはブランドの本拠地であるロレアルのウェブサイトに到達することになる。

デジタルコンテンツの未来の要

ギシャール氏によれば、ロレアルの未来のビジョンを端的に表現する言葉は、予測可能性と没入感だという。同氏が言う予測可能性とは、消費者が肌と髪の加齢メカニズムについて最大限に情報収集でき、適切な商品にたどり着けるようにすることを意味する。

例えば、ロレアルはヘルスケア企業のヴェリリー(Verily)と提携し、肌と髪の加齢メカニズムの理解を深めることで得られた知見を、ロレアルが掲げる「プレシジョン(精密)・ビューティー」技術とその商品開発に反映させようとしている。

ヴェリリーの研究チームとロレアルのアクティブコスメティクス部門は、センサーやAIアルゴリズムを利用して、皮膚科学、スキンケア関連の新たなテクノロジーや遠隔診断ソリューションの開発にも取り組んでいる。こうした新たなソリューションは、いずれ新たなサービスの基盤となるだろう。

没入感については、ギシャール氏はイヴ・サンローラン(YSL)ブランドを例に挙げた。このブランドが展開する店舗内体験「セント・セーション(Scent-Sation)」では、顧客の心の状態に合わせた、パーソナライズされた独自のフレグランスを提案してくれる。

YSLビューティーはまた、分散型ソーシャルトークンプラットフォームのプールズ(P00LS)との提携によって、アーティストのアガット・ムージャンとキトゥンズが参加する限定トークン130万ユニットを7日間で完売した。購入者は2万4000人で、うち4600人は両方のトークンを購入した。

「私たちの前には無限の可能性がある。今はまだWeb2ばかりだが、これからはWeb3が主戦場となってくる」と、ギシャール氏は述べた。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

関連する記事

併せて読みたい

1 日前

世界マーケティング短信:Cookie廃止の延期、テスラの人員削減

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

2 日前

大阪・関西万博 日本との関係拡大・強化の好機に

大阪・関西万博の開幕まで1年弱。日本国内では依然、開催の是非について賛否両論が喧しい。それでも「参加は国や企業にとって大きな好機」 −− エデルマン・ジャパン社長がその理由を綴る。

3 日前

エージェンシー・レポートカード2023:カラ

改善の兆しはみられたものの、親会社の組織再編の影響によって、2023年は難しい舵取りを迫られたカラ(Carat)。不安定な状況に直面しつつも、成長を維持した。

3 日前

私たちは皆、持続可能性を前進させる責任を負っている

持続可能性における広告の重要性について記した書籍の共著者マット・ボーン氏とセバスチャン・マンデン氏は2024年のアースデイに先立ち、立ち止まっている場合ではないと警告する。