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2 日前

40 Under 40 2025:APACの明日を担う、日本の若き才能

アジア太平洋地域(APAC)のマーケティング業界で活躍する若手の逸材を毎年選出する「40 Under 40」。今年、日本から選ばれた3人をご紹介する。

40 Under 40 2025:APACの明日を担う、日本の若き才能

亀山桃子
(マテリアル ゼネラルマネージャー)

マーケティングコミュニケーションを専門とする東京のマテリアル社で女性初、しかも最年少でゼネラルマネージャーに就任した亀山氏。組織マネジメントと人材育成、新規事業創出を統括し、ビジネスプロデューサーとしてクライアント対応も担う。
同氏が新卒で入社したのは2015年。以来、飲料や通信、化粧品、金融など多彩な分野の企業のPRプロデュースを務めてきた。

今ではその域を超え、プロジェクトマネジメントも担当。クライアントのマーケティングコミュニケーション戦略の策定や、経営課題解決のサポートも担う。

今年6月には姉妹会社「マテリアルリンクス」を設立。ソーシャルコマース支援に特化した同社CEOに就任した。同社は事業開始後、TikTok Shopと先進的取り組みに着手。初めて手がけた商品は初日に完売となった。次世代型ショッピングエクスペリエンスの牽引者として、その地位を瞬く間に確立したと言える。

亀山氏のリーダーシップの特徴は、新たな機会を見極め、活用する能力だ。スマートフォン向けのミニドラマの立ち上げはその好例。7社との提携を実現させ、マテリアルの市場認知度を大きく向上させた。

2018年には社内で「キャリアオーナーシップカルチャー」制度を確立。これはキャリアへの主体性と多様なキャリアパスを促進する取り組みで、多様性と包摂性を重視する職場環境の構築を目指す。

さらに業界イベントでの講演や、大学での講義も定期的に実施。女性リーダーとしてのロールモデルを担う。同氏のビジョンと革新的アプローチは、マテリアルのビジネス的成功にとどまらない。PRはビジネス革新と社会にどのような影響を与えられるのか −− その概念を変えつつある。

伊藤裕平
(TBWA HAKUHODO ヘッド・オブ・デザイン)

デザインは社会に永続的な影響をもたらすツール −− 20年近くのキャリアで常にデザインの再定義を試み、その可能性を広げてきたのが伊藤氏だ。「100年続くデザイン」をテーマに、廃車のEVバッテリーを街灯に再利用した「The Reborn Light」(東日本大震災後、福島に設置)や、音声だけで操作する世界初の公衆トイレ「Hi Toilet」(東京・渋谷区)といった画期的なプロジェクトをこれまで実現した。

ホタテの貝殻を再利用したヘルメット「Shellmet(シェルメット)」の開発は新素材「ShellTec」へと進化、世界で称賛を浴びた。日本フィルハーモニー交響楽団と協働した「ダイバーシティコンサート」では、「Sound Hug(サウンドハグ)」という技術で聴覚障がい者に音楽の楽しさを提供。日産自動車との取り組み「Green Journey」では、持続可能な観光の概念を変えた。

昨年は社内に「地球中心デザイン研究所(ECD)」を共同設立。地球と人が共に繁栄できる時代の創造を目指す。また、多様な人材の育成やジェンダー平等を全社的に推進。包摂性と持続可能性を重視する文化の醸成にも注力する。次世代の指導にも熱心で、美学だけにとどまらず、デザインの社会的影響力について若手デザイナーに説く。

デザインを社会的インフラとして捉え、多様なステークホルダーとの協働でイノベーションを実現する −− ShelltecやGreen Journeyといったプロジェクトは、まさに伊藤氏のビジョンの結実だ。多くの広告賞の獲得に加え、自社の新たな収入基盤も構築。「コンセプトの具現化と永続化、そして社会の未来像を創造する力に長けている」。社内での専らの評価だ。

デザインが従来の枠を超え、持続可能な世界をつくり出すことで、人々の共感を呼ぶ −− こうした革新的思考こそ、伊藤氏のレガシーと言えよう。

キング祐美
(Aww エグゼクティブディレクター)

キング氏の持ち味は、オープンマインドな姿勢とクロスカルチャー的クリエイティブ思考、そして直感的なストーリーテリングだ。伝統的に男性優位かつ保守的な日本の業界で、日本と韓国、米国にルーツを持つ同氏の発想と存在感は際立つ。

キャリアのスタートは映画業界。20代でスタートアップを設立し、アジア各国でクライアントを獲得、イノベーションパートナーとしての信頼を得た。その勢いに乗りバーチャルヒューマンカンパニー「Aww」を共同創業、現在はエグゼクティブディレクターを務める。同社はアジア初のバーチャルヒューマン「Imma」をプロデュース。アイデンティティとAIを掛け合わせた、感情に訴えるデジタル体験の創出で知られる。

これまでディズニーやコーチ(Coach)、メタ、アマゾン、P&G、ユニリーバといった多彩なブランドと協業、ハイコンセプトで文化的感性を備えたキャンペーンを展開。またエヌビディアと提携し、現実のファッション界とデジタルのそれとを結ぶ日本初のAIスタイリストを導入した。

「コーチプレイ@原宿」では「スタイルコーチ」エクスペリエンスを主導、実店舗とAI搭載のデジタルヒューマンを融合させ、メディアの注目を集めた。また米国のアニメスタジオやファッションブランドにも、バーチャルプロダクション、IPイノベーション、アジアのZ世代・アルファ世代向けストーリーテリングのローカリゼーションなどでアドバイスを与える。

テクノロジスト、ストーリーテラー、戦略家としての素養を併せもつハイブリッドリーダー、キング氏。ビジネス面でも才を発揮し、プレシリーズA資金調達でAwwをブティックスタジオから主要ブランドのイノベーションパートナーへと発展させ、世界的認知を受けた。

社内ではメンタリングや多様性のあるリーダーシップ、ハイブリッドなチーム編成、柔軟な働き方、創造的な自律性などを推進する。同氏にとって多様性は創造性の源だ。Awwのデジタルクリエイティブチームは日本有数の多様性を誇り、クリエイティブリーダーの半数以上は女性、またはノンバイナリーを自認。メンバーの国籍は10カ国以上に及ぶ。

また、2人の子を持ち、人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」と協働した経験から、女性のエンパワーメントと地球市民意識の推進はライフワーク。LGBTQIA+や、カンボジアのDV(ドメスティック・バイオレンス)被害者を支援する取り組みも主導、後者の活動は「クールジャパン・マッチングアワード」を受賞している。

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