Jessica Goodfellow
2021年5月17日

「クッキー後」の時代へ APACマーケターの課題

Campaign Asia-Pacificと調査会社フォレスター、WFA(世界広告主連盟)による共同調査で、アジア太平洋地域(APAC)の半数近いブランドが依然としてサードパーティクッキーに依存していることがわかった。

「クッキー後」の時代へ APACマーケターの課題

今、オンライン広告の世界は大きな転機を迎えている。個人情報保護の風潮が強まり、アップルやグーグルといった巨大企業が規制強化を始めたからだ。アップルは基本ソフト(OS)を更新し、アプリ開発業者による行動履歴の追跡をユーザーによる「事前許可制」とした。グーグルは、クローム(Chrome)におけるサードパーティクッキーのサポートを来年までに廃止する。両社の動きは膨張を続けるデジタル広告に甚大な影響を与えた。

こうした両社の方針は1年以上前に発表されたにもかかわらず、APACブランドの半数近く(43%)はマーケティング活動を依然サードパーティクッキーに依存し、その多くは「クッキー後」の世界に対応する術 −− 人材やツールなど −− を持ち合わせていないことが最新の調査結果からわかった。

この調査はCampaign Asia-Pacificとフォレスター、WFAが共同で行った「APACの広告エコシステムにおける個人情報の価値(The Price of Privacy on APAC's Advertising Ecosystem)」と題されたもの。今月4日に開催されたカンファレンス「Campaign360」で発表された。

調査は今年3月から4月にかけて実施。対象となったのはAPACのブランドやエージェンシー、パブリッシャーで働く137名のマーケティング責任者だ。

その結果わかったのは、クッキー後に対する意識や準備の進み具合が各分野の企業で差異があること。

例えば、個人情報保護制度が厳格化されることで「ターゲティングの精度が低くなる」と答えた回答者はメディアエージェンシーで60%だったのに対し、ブランドでは40%。ブランドの回答者の25%は「変わらない」、また22%は「わからない」と答えた。

ブランドのニーズへの対応にもギャップが生じた。パブリッシャーの約3分の1(29%)は「クライアントが求めるソリューションはすべて提供できる」と答え、個人情報保護とパーソナライズド広告との両立は可能とした。だがメディアエージェンシーでは11%で、半数近く(49%)は「若干であれば提供できる」と回答。一方、「パートナー企業は必要なものをすべて提供してくれる」と答えたブランドは3%に過ぎなかった。

「あなたのパートナー(エージェンシー、テック企業、パブリッシャー)は、個人情報保護とそのソリューションに関してどれほど役立っていますか?」という質問への回答。「必要なものはすべて提供してくれる」と答えたブランド及び広告主は3%(図・左上)。「クライアントが必要なものはすべて提供できる」と答えたメディアエージェンシーは11%、パブリッシャー及びメディアオーナーは29%だった(中上、右上)


サードパーティクッキーの廃止に関しては、概してブランドやパブリッシャーよりもメディアエージェンシーの方が意識が強いこともわかった。

また、インターネットにおける「価値交換」に関しては消費者ともっと密なコミュニケーションが必要であることも。マーケティング責任者全体の64%は、「データ収集がユーザーエクスペリエンスを高めることを消費者は理解していない」と回答。価値交換の意義が理解されなければ消費者はデータ提供に消極的となり、アイデンティティソリューションの効果は下がる。

また、ブランドの大半は個人情報保護に関して「消費者とどのようにコミュニケーションを取ればいいかわからない」と回答。「特化したコンテンツ戦略を取っている」と答えたブランドは30%、「規定に即した最低限の措置を取っている」ブランドは59%だった。

個人情報保護が厳格化されると、企業にとって最大の課題となるのはリソース不足。だが、決して効率的とは言えない活動状況も浮き彫りになった。それを端的に表すのが、ファーストパーティデータの収集量と使用量のギャップ。データの種類別ではオンラインアクティビティーやエンゲージメント、デバイスなどに大きな開きがあった。

「どのようなファーストパーティデータを収集、ないし使用していますか?」という質問への回答。薄い緑はデータ収集量に対する使用量を表す。エンゲージメント、デモグラフィック、オンラインアクティビティー、デバイスなどのデータでギャップが大きい


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(文:ジェシカ・グッドフェロー 翻訳・編集:水野龍哉)

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