Gemma Charles
2021年8月06日

ネスレ、ナイキ、ユニリーバも賛同するグッドループとは

スタートアップ企業のグッドループは、5年前の創業以来、ネスレ、ナイキ、ユニリーバなどの有名ブランドを惹きつけ、投資家らからの資金調達にも成功している。

ネスレ、ナイキ、ユニリーバも賛同するグッドループとは

プログラマティックとパーパスは、一見、相反するように思えるが、英国のスタートアップ企業グッドループ(Good-Loop)は、この2つを結び付けることに成功している。

エージェンシーで幹部経験のあるエイミー・ウィリアムズ氏と、ソフトウェアエンジニア兼テックコンサルタントのダニエル・ウィンタースタイン氏が2016年に立ち上げたグッドループは、ネスレ、ナイキ、ユニリーバといった素晴らしい顧客基盤を築いている。グッドループのコアプロダクトは、動画広告を視聴すると、広告メディア費の50%を、視聴者が慈善団体に寄付できるという仕組みを持つ、広告配信のプラットフォームだ。

広告主にとってのメリットは、広告によって自らが選んだ慈善団体を支援できることだ。(これまでに寄付された金額は200万ポンド[約3億円]を超える)さらに、この取組みの倫理的な側面によって、広告視聴に対する消費者のエンゲージメントも高まるはずだとグッドループは主張している。

グッドループは最近、サステナビリティの分野にも注目しており、広告主が、デジタルキャンペーンにかかるカーボン(炭素)コストをリアルタイムでモニタリングし、相殺することができる「グリーン・アド・タグ」や、ブランドやエージェンシーが、自身のオンライン広告による環境負荷を計算するのに役立つカーボン・カリキュレーター(炭素計算機)の提供を開始した。

2020年には、ブランドテクノロジー企業ユー・アンド・ミスター・ジョーンズ(You & Mr Jones)を含む投資家から140万ドル(約1億5270万円)のシード資金を調達した。2021年上半期は前年比200%の成長で推移している。

就職から起業まで

30歳になったばかりのウィリアムズ氏(下の写真)は、大学卒業後、オグルヴィで社会人スタートを切り、しばらくは順調だった。

「最初の数年間は、まさに自分が求めていた職場で、ブランド構築など、可能な限り多くのことを学んだ。大学を卒業したばかりのころは、友人を作り、社内のきらびやかなバーに通い、楽しい時間を過ごすことができれば、それで十分だった」とウィリアムズ氏は振り返る。

しかし、ユニリーバの担当として仕事に取り組んでいたとき、サステナビリティに関心を持つようになった。日用消費財(FMCG)大手のユニリーバは当時、倫理的課題の認証取得に力を入れていた。長丁場の社内ワークショップを開催したとき、ウィリアムズ氏はあることに気づいた。

「鮮度の重要性について3日間のワークショップを行ったが、3日目の終わりには、これはあまり重要ではないと感じていた」と、ウィリアムズ氏は言う。彼女はむしろ、ユニリーバが洗濯に使う水の量を削減しようと取り組んでいることに興味を持った。

そこで、ウィリアムズ氏はオグルヴィを辞め、パブで働きながら、「世界を良くする」をテーマに、コンセプトづくりに専念した。

当初は決して順風満帆ではなかった。キャリアを捨て去ったのが正しかったかどうかという「実存的不安」も感じていた、とウィリアムズ氏はいう。

「ビジネスパートナー探しに何度か失敗し、何の収穫もないまま10カ月が過ぎた。最後の望みをかけて『スタートアップの仕事』というフォーラムに投稿したところ、その投稿を読んだダニエル・ウィンタースタイン氏が連絡をくれた」と当時を振り返る。

2人は会ってすぐに意気投合し、3カ月後には、一緒にビジネスを始めていた。「私はまさにコマーシャルな業界の出身なので、提案としてのパーパスを理解していたし、それについてブランドと話す方法も知っていた。一方、彼は顧客向けのアドテクを構築していたので、プラットフォームの構築方法をよく知っていた」

2人の転機となったのは、ウィリアムズ氏が、街の屋台経営者を支援するKERB Foodを説得し、グッドループの最初の顧客になってもらったときだ。ウィリアムズ氏はこの実例をユニリーバに紹介した。ユニリーバはそのビジョンに賛同し、そこから飛躍的な成長が始まった。

新たな提携先

グッドループは現在、21人の従業員を抱え、エディンバラとロンドンにオフィスを構える。

これまでに顧客となったブランドはナイキ、ペプシコ、ネスレなどだ。ネスレは、大西洋の両岸でシリアルブランド「チェリオス」のキャンペーンを行い、最近はアディダスとともに、サステナビリティにフォーカスしたスニーカー「スタンスミス(Stan Smith)」のキャンペーンを展開している。

ウィリアムズ氏によると、グッドループのプラットフォームを利用したブランドの約半数が、何らかの形で自社の価値観を表現したクリエイティブを制作しているという。

「最近、米国のあるブランドと、とあるテストを行った。2つのクリエイティブを用意し、片方は、そのブランドのパーパスである国立公園の保護と保全という、パーパスを明確に表現したものだった。もう片方のクリエイティブは、製品にフォーカスしたものだった。その結果は実に興味深いものだった。製品に焦点を当てたクリエイティブは、広告想起率は高かったが、一方、パーパスを表現したクリエイティブは、親和性とロイヤルティが高く、友人に勧める確率も高かったのだ」

予想外の課題もある。慈善団体とのマッチングだ。ダヴ(Dove)のように、希望する支援先がはっきりしている(国連女性機関やダヴ・セルフエスティーム・プロジェクトなど)顧客もいれば、グッドループにマッチングを任せる顧客もいる。

「私が最初に学んだことの一つは、慈善団体に寄付することは思うほど簡単ではないということだ。そこにはさまざまなニュアンスがある。それは当然で、慈善団体も自分たちのブランドイメージを守る必要があり、本当に信頼できる企業、自分たちの取り組みを後押ししてくれる企業と手を組む必要があるのだから」

ウィリアムズ氏は、グッドループ最大のチャリティーパートナーである世界自然保護基金(WWF)を例に挙げる。WWFは「完全菜食主義(ヴィーガン)」を指向する慈善団体として、サステナブルミート(食肉)を扱う企業からの提携の打診はすべて断ってきた。

「WWFがその整合性を守ろうとするのは当然だ。私たちにできるのは、彼らが自身のブランドにより適したパートナーを見つけるのを支援することだ」

グッドループは当初、ブランド側の新規顧客開拓をウィリアムズ氏の直接営業に頼ってきたが、ここ数年はメディアエージェンシーとの協業も進んでいる。メディアエージェンシーは「パフォーマンス指標の目標を課されているため、温かく曖昧なチャリティ」には慎重な姿勢だった。

しかし、グッドループはKitKat(キットカット)のキャンペーンのコンペを勝ち抜いたことで、ネスレのエージェンシーであるゼニスとの関係性を深めることができたという。ゼニスは最近、ネスレのエージェンシーに再任された

「あの勝利で私たちが本当に手に入れたものは、ゼニスとの関係性であり、私たちが自社の強みを知っており良い結果を出すということを、彼らに証明できたことだ」。ゼニスは、今やグッドループにとって最大級の顧客であり、ネスレ以外のキャンペーンでもグッドループのプラットフォームを利用している。

これからの展開

現在、グッドループは米国での成長を視野に入れている。米国でのビジネスは売上高の48%を占めており、2022年には現地オフィスも構える予定だ。

グッドループにとってのもう一つの優先事項は、サステナビリティのためのアドテク分野に注力することだとウィリアムズ氏はいう。グリーン・アド・タグやカーボン・カリキュレーターなどのプロダクトに加えて、ダイバーシティ&インクルージョンに関するブランドの取り組みを広告バイイングに反映させる仕組みや、クライアントのメディア支出によって支援されているLGBTQ+関連のコンテンツがブロックリストによって阻止されないようにすることも重要だ。

しかし、これらのイノベーションが次々に実現しても、コアプロダクトがカギとなっていることに変わりはない。

ウィリアムズ氏は「このシンプルな広告仕様の中心にあるのは、消費者が、広告を目にすることによって、広告主と共に少しでも社会が良くなることを支援できるということであり、それはこれからも変わらない」と締めくくった。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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