Ryoko Tasaki
2020年4月24日

世界マーケティング短信:コミュニケーション業界のニューノーマル

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:コミュニケーション業界のニューノーマル

※記事内のリンクは、英語サイトを含みます。

グーグル、ジャーナリズムへの支援策を相次いで発表

グーグルはジャーナリズム支援の一環としてジャーナリズム緊急支援基金を立ち上げ、4月15日から申請を受け付けている。地域社会のために独自のニュースを制作している中小規模の報道機関が対象で、12カ月以上の活動実績があり、2~100名の正社員のジャーナリストを雇用していることが応募条件。地域や報道機関の組織規模に応じて、数千~数万米ドルの範囲で資金提供する予定。締切は4月29日23:59(太平洋標準時)で、延長/縮小の可能性もあるとのこと。

また17日には、ニュースパブリッシャーにグーグルアドマネージャー(広告配信プラットフォーム)を5カ月間無償で提供することも発表した。対象となるパートナーには、今後数日間で通知される。グローバルパートナーシップのマネージングディレクター、ジェイソン・ウォッシング氏は公式ブログ内で「世界的な危機の時代に人々は、情報を得て安全を確保するために、質の高いジャーナリズムに頼ります。また、ニュース報道の横に表示される広告は、最新のニュースを書いてサイトやアプリを更新しつづけるジャーナリストへの資金提供に役立ちます」と記している。

Teamsの動画を、Teamsで制作

テレワーク需要の高まりを受けて、マイクロソフトのウェブ会議ツール「Teams」の利用が急増しており、毎日4400万人以上のユーザーが使用しているという。次なるマーケティング施策を打ち合わせるため、現在活用しているマーケターも多いことだろう。

このプラットフォームの重要性を訴求する動画が14日に公開された。制作にはマッキャンが協力したが、従来のような撮影手法はとらず、すべてTeamsで制作したという。動画内ではロンドン警視庁、ボローニャ大学、セントルーク大学ヘルスネットワーク、ロレアルが新型コロナウイルスとの戦いにおいてTeamsを活用したことが、それぞれの口から語られる。

制約だらけのCM制作、その舞台裏

外出自粛による制約の中でのCM撮影は「今までに経験してきた中で、もっともチャレンジングだった」――そう語るのは、ビスケット・フィルムワークのアーロン・ストーラー氏。パンデミック前にはスーパーボウルに合わせて衣料用洗剤「タイド」のCMを制作した同氏だが、柔軟剤「スナッグル」のCMを自宅のランドリールームにて、妻と4人の息子たちをモデルあるいはクルーとして撮影することになろうとは想像もしていなかったという。

クライアントから「広告インベントリはあるのに、流す広告が無い」と連絡を受けたクリス・ベレスフォード・ヒル氏(TBWAシャイアット・デイのCCO)とストーラー氏は、わずか10回ほどメッセージのやりとりで、混沌とした在宅勤務の現状を描くというコンセプトを決定した。短いバージョンの動画をiPhoneで撮影してクライアントに見せ、約5営業日でゴーサインが出たものの、家族を動員した撮影は50テイクにも上ったという。だが完成したCMはすぐに承認され、数日後には公開となった。

この作業工程の短さやドタバタ劇のようなやりとりも、「COVID-19のカオスの中で、ニューノーマルになった」とベレスフォード・ヒル氏。従来であれば膨大なプロセスを経て広告を制作してきたが、このカオスの中では「課題のソリューションを、どんな形でもクライアントに提案することができます。どんな会話も可能で、これはとても驚くべきこと」と強調する。ストーラー氏も、パンデミック後は「アイデア、クラフト、クリエイティビティが再び主導権を握ることになるのでは」と、前向きにとらえていると語った。

広告にもっとダイバーシティとインクルージョンを

世界広告主連盟(WFA)は、マーケティングにおいてダイバーシティ&インクルージョンをより一層推進していくことを提言するガイドを発表した。人種やエスニシティー、障害、セクシュアリティー、性自認、年齢などの描写を正確かつ進歩的にするべきだとした。イプソスが2018年に発表した調査結果によると、28カ国14,700人の調査対象の72%が、広告は自分の周りの世界を反映していないと感じているという。性差別的な広告によって気分を害される(45%)、古くからのジェンダー偏見の是正に広告主はもっと取り組むべき(64%)という回答も多かった。

今回のガイドの発表について、WFAのステファン・レールケCEOは次のように語っている。「ダイバーシティの重要性は、未だかつてないほどに増しています。今のような危機的状況下で、共感とクリエイティビティが注目を集めており、これらは私たちの業界が継続的に発展していくためにも不可欠な要素。そしてダイバーシティは、共感とクリエイティブの生命線なのです」

DAN UK&Iおよびマークルで経営層が交代

かつて電通イージス・ネットワークのアジアパシフィックCEOを務め、直近は英国およびアイルランド担当のエグゼクティブチェアマンのニック・ウォータース氏が7月1日より、ロンドンを拠点とするメディア監査会社エビキティ(Ebiquity)のCEOに就任する。

また電通グループのマークルでは、米プレジデントを務めるクレイグ・デンプスター氏が6月1日よりグローバルCEOに昇格する。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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