Campaign Staff
2018年3月23日

世界マーケティング短信:マーケティング界を直撃する「フェイスブック問題」

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをまとめてお届けする。

世界マーケティング短信:マーケティング界を直撃する「フェイスブック問題」

フェイスブックの醜聞、マーケターの課題

英国の選挙コンサルティング会社「ケンブリッジ・アナリティカ(CA)」が何千万というフェイスブック(FB)利用者の個人情報を不正取得し、米大統領選を左右したという問題が今週発覚した。この醜聞は、FBにとってこれまでで最も深刻なものだろう。FB株は急落し、マーク・ザッカーバーグ氏は50億米ドル(約5250億円)の純資産を損失した。PR的見地から言えば、FBの対応はひどいものだった。ツイートやブログへの投稿は極めて「防戦的」で、最高責任者による謝罪からは程遠い内容だったし、ザッカーバーグ氏が公に過失を認め、声明を出したのは発覚から5日以上も経ってからだった。FBはここに来てやっと個人情報を保護する手段を発表したが、信用の失墜は速い。スキャンダルがこれからどこまで発展するのか、先も見えない。

一方でマーケティング界が認識しなければならないのは、CAが政党のためにFBのデータを利用したやり方は、通常のデジタルマーケティングのプロセスとあまり変わらないことだ。この問題は改めて、精度の高いターゲティングにおける「倫理性」を問いかける。多くの人々は、自分たちのデータがどのように利用されているか知る由もない。透明性が叫ばれる時代に、こうした状況はソーシャルメディアのユーザーにとって許容できる「交換価値」となり得るのだろうか。

WPP、「より非官僚的に」

WPPのCEOであるマーティン・ソレル卿は欧州でのアドバタイジングウィークで、P&Gやユニリーバといった大手クライアントから「クリエイティビティーをより高め、仕事に関わるスタッフの人数を減らしてほしい」と求められていることを明かした。「より迅速で賢明な対応、官僚的側面の打破、組織の簡素化、クリエイティブコンセプトの重視……こうした改革を実現する契機と解釈しています」。組織の刷新の必要性を認めたこの発言は、広告代理店の持ち株会社が現在受けているプレッシャー、そして代理店が本来的な姿に回帰するのでは、という可能性を示唆する。代理店が存続していくために大事なのはやはり簡素化と課題の解決で、事の複雑化ではない。

今週シンガポールで開かれたカンファレンス「Campaign360」で、ユニリーバの北アジア担当メディアディレクター、デビッド・ポーター氏がこれら上記のテーマについて語った。データに関しては、5月から施行される「EU一般データ保護規則」について触れ、原則的にEU内の人々がアクセスできるウェブサイトを公開する企業には「全て影響が出る」と発言。マーケターにとって規則に従うことは頭痛の種に違いない(規則に違反した企業には、最大で年間売上高の4%の罰金が課される)。ポーター氏は、「この規則は政府が我々の業界をターゲットとしたものではなく、国民を保護するために施行すると捉えるべきです。もしこれに従わなければ、大衆は我々から離れていくでしょう」。

「代理店はクライアントにもっと貢献できる」というテーマでは、「彼ら(代理店)がその気になれば、あっさり変わることができるのではないでしょうか。(代理店は)常に驚くほど形態を変えてきましたから」。ただし「改革はすぐに実行されるべき」であり、「もし来年も我々がこの問題を話し合っていたなら、改革の速度が不十分ということなのです」。

投資ファンドがデジタルマーケティングエージェンシーを設立

世界的な投資会社KKRは今週、中国に“ワンストップ”デジタルマーケティング企業を設立すると発表した。新会社「キュー&コ(Cue&Co)」はデジタル広告やブランド戦略、プログラマティックバイイング、メディアサプライを専門とする4つの企業を統合、中国市場でより総合的なマーケティングサービスの確立を目指す。KKRは「中国のマーケティングサービスは細分化され過ぎ、消費者行動に追いついていない」と考える。キュー&コが既存のサービスとまったく異なるものを提供できるか否かはまだ分からない。だがこうした動きは、ベインキャピタルによるADKの買収といった規模ではないにせよ、投資会社が既存のマーケティングビジネスの再構築に大きな潜在性を見出していることの表れだ。

東京五輪を見据える、日本のコンドームブランド

五輪の選手村における「性の乱れ」は、つとに知られる事実だ。報道によれば、日本のコンドームメーカーが2020年の五輪に商機をうかがっているという。大会期間中は、何十万個というコンドームが選手に無料で配布される。オカモトや相模ゴムといった「極薄」製品で名を売るブランドは、デュレックスやトロージャンといった欧米のライバルたちに対抗するため、ブランド認知度を世界的に高めるチャンスと見る。冗談めいた話はさておき、五輪は日本製プロダクトの質の高さを世界に知らしめる絶好の機会であることは間違いない。成功を持続させるには、これらブランドが五輪との関わりをどのようにオーディエンスに伝えるか −− 常連スポンサーに語りかけるように、シンプルかつ楽しく、そして有意義な手段で −− にかかっているだろう。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

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