Omar Oakes
2019年2月18日

電通イージス、「ブランドのインハウス化は好機」

電通イージス・ネットワークは、今後の投資が2021年まで営業利益を圧迫するとの見通しを投資家に報告した。

(写真:Shutterstock)
(写真:Shutterstock)

ブランドがマーケティングのインハウス化を進め、広告代理店へのプレッシャーが増すなか、電通イージス・ネットワークのティム・アンドレーCEOは「ハイブリッドモデルのクライアントサービスを追求する好機になる」と語った。

カラ(Carat)やビジウム(Vizeum)といったメディアネットワークを傘下に持つ電通の海外本社は先週、「今後予定する投資コストの増大が、2021年まで営業利益を圧迫するだろう」と投資家に報告した。

クライアントがプログラマティックメディアなどのインハウス化を進めていることに関しては、「いずれにせよ、収益機会になる」(アンドレー氏)。

「例えば取引プラットフォームなどをインハウスで行いたいというクライアントに対し、我々は既に対応をとってきました。これからもサポートを続けていきます。実際それが、我々にとっても収益機会となるのです」。

「インソーシングのプラットフォームについてはよく耳にしますが、インソーシングからアウトソーシングに戻るという話は聞きません。インソーシングで競争上の優位性を得られるとクライアントが判断するなら、我々はそれをサポートし、アドバイスしていきます」

プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の北米メディアビジネスにカラが参画したことは、「インハウス事業を含めたハイブリッドモデルの好例」とも。

「我が社が米国で請け負うP&Gのビジネスは3倍に成長しました。P&Gは自社のデータを使ってプログラマティックトレーディングの一部をインハウスで行う決定をした。そして我々がそのサポートをした。依頼された業務の中にはP&Gが対応できないこともあったので、機能するように我々が修正したのです」

電通イージス・ネットワークは2021年までに営業利益を15%とする目標を掲げる。2018年は12.9%だったが、この数値は「グループ全体で労働環境改善のために投資を行った結果で、下限」。2019年も同じ投資を続けていく予定だという。

同社の調整後営業利益は2018年、729億6000万円に減少。実質ベースでは前年比マイナス1.6%だった。

先週の電通の発表によれば、同社国内事業のオーガニック成長率は2.1%。一方で電通イージス・ネットワークは4.3%で、EMEA(欧州、中東及びアフリカ)の7.4%という高いオーガニック成長率に支えられた。だが昨年は英国で、同国政府や金融サービス比較サイトGoCompare.com、英国自動車協会(AA)などの大規模な新規プロジェクトを数多く失っている。

先週の投資家向け説明会でアンドレー氏は、この1年最も好調だったクライアントの分野として「テクノロジー、飲料、高級品」を列挙。自動車分野に関しては「一長一短だった」とコメントした。

広告代理店ネットワークはマーケティングサービスの価格下落に直面しているが、「早くからデータへの投資を行ったことが、電通と競合他社との差別化の要因になっている」。

電通イージス・ネットワークは2年前、高度なターゲティングを可能とするプラットフォーム「M1」を開発した米データマーケティング会社マークル(Merkle)を買収。以来、マークルは2桁成長を遂げたという。

(文:オマール・オークス 編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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