Campaign staff
2018年5月31日

カンヌライオンズ受賞作を予想する

来月に迫ったカンヌライオンズ2018。Campaignでは、アジアのクリエイティブリーダーたちに受賞作品を予想してもらった。対象としたのは、自社の作品以外のものだ。

カンヌライオンズ受賞作を予想する

今年のカンヌライオンズに先駆け、Campaignはアジアで活躍するクリエイターたちにシンプルなアンケート調査を行った。「今年のフェスティバルで受賞すると思うキャンペーンを、あなたの国・地域から5つ挙げてください」。条件は1つだけ。自社の作品は対象としないことだ。クリエイティブのプロたちが、最も心を動かされた作品とは何か。上司の意向ではなく、彼らが純粋に作品群と向き合った結果を以下に挙げる。全てのリストはこちらから(英語)。

日本からはADKの八嶋実氏、エデルマンの森田尚子氏、マッキャンの中村猪佐武氏、ピュブリシス・ワンのエリック・ロサ氏の4名が参加。なぜそれらの作品が優れているのか、というコメントも付記してもらった。あなたはどのような感想を抱くだろうか。

(左上より時計回りに)八嶋実、中村猪佐武、エリック・ロサ、森田尚子の各氏

八嶋実
エグゼクティブコミュニケーションディレクター
ADK

作品:へーホンホヘホハイ
エージェンシー:ビーコン・コミュニケーションズ(東京)
クライアント:マクドナルド

強烈なほどにシンプル。一般の若者たちが口真似をしたりSNSでシェアしたりするような、受け入れやすい遊び心に満ちている。嫉妬すら感じる出来栄え。

作品:相撲ガールズ82手
エージェンシー:電通(東京)
クライアント:北國新聞

これまで見たことがないような、驚くほどダイナミックで人目を引きつける相撲のグラフィック。このキャンペーンのインパクトは、毎年開かれる高校相撲大会を告知するという基本的な責務を優に超越している。

作品:聞こえる選挙
エージェンシー:電通(東京)
クライアント:ヤフージャパン

美しく、静かなプロテスト広告。社会に大きな影響を及ぼした点で出色。

森田尚子
ディレクター・オブ・ブランド
エデルマン・ジャパン

作品:オーケー・ゴー(OK Go)‘オブセッション(Obsession)’
エージェンシー:SIX
クライアント:ダブルA

エンターテインメント性の高い、目を奪うようなコンテンツだ。単なる1枚の紙にすぎないブランドのプロダクトに、極めて大きな意味合いを持たせている。紙の滑らかなクオリティーを、まったく予期せぬ手法でアピール。1枚の紙でこのようなクールな表現ができるとは、これまで思いも寄らなかった。コンテンツに使われている紙が全てリサイクルなのも、「語るだけでなく、行動せよ」というブランドの理念を十分に訴求している。

作品:リアルビューティーID:本当の美しさを閉じ込めないで
エージェンシー:ADK(東京)
クライアント:ユニリーバ / ダヴ

日本の10代の少女たちの内面をよく捉え、ダヴの「リアルビューティー・ストーリー」のエッセンスを的確に伝えている。ビジュアル的にはさほどドラマティックではないかもしれないが、ブランドのストーリーがコンテンツの中で見事に表現されている。

中村猪佐武
ディレクター、ECD、制作本部長
マッキャン・ジャパン

作品:‘Experience the team in flight at PyeongChang 2018’
エージェンシー:未確認
クライアント:インテル

シンプルに驚いたし、素直に美しいと思った。シンプルなテクノロジーで壮大なエンターテインメントを作り上げている。

作品:‘ユニクロ 24アワー・ジーンズ(24-hour Jeans)’
エージェンシー:未確認
クライアント:ユニクロ / ファーストリテイリング

プロダクトの特徴を、スマートでユニバーサルな方法できちんと表現できている。

エリック・ロサ
チーフクリエイティブオフィサー
ピュブリシス・ワン・ジャパン

作品:ナイキ ‘ハイパーコート(Hyper Court)’
エージェンシー:BBHシンガポール
クライアント:ナイキ

イラストやその技術をはじめ、実際のコート上の観衆とのインタラクションとモバイル体験を融合させるやり方まで、アイデア全てが賞賛に値する。全てのディテールに細心の注意が払われ、完璧な表現がなされている好例。

作品:‘パラオ誓約(Palau Pledge)’
エージェンシー:ホスト / ハバス
クライアント:パラオ・レガシー・プロジェクト

極めて多くの意義がある、実にシンプルで素晴らしいアイデア。旅先の自然に配慮し、保護に努めるという誓約に、入国の際にサインする。受賞に値するだけでなく、この小さな国に将来有益な変革をもたらすアイデアだろう。

作品:‘チョップ・チョップ(Chop Chop)
エージェンシー:アンバー・コミュニケーションズ(上海)
クライアント:ASD

宣伝の対象となっているのは、まったく同じサイズのプロダクト。それらを活用した印刷物によるキャンペーンだ。昨今、消費者の目に止まる広告を作り出すことはますます難しくなっているが、印刷物となればなおさら。だがこのキャンペーンは、それに成功している。思わず細部に見入ってしまい、その精密さに感嘆する。



(翻訳・編集:水野龍哉)
提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

20 時間前

世界マーケティング短信:Cookie廃止の延期、テスラの人員削減

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

1 日前

大阪・関西万博 日本との関係拡大・強化の好機に

大阪・関西万博の開幕まで1年弱。日本国内では依然、開催の是非について賛否両論が喧しい。それでも「参加は国や企業にとって大きな好機」 −− エデルマン・ジャパン社長がその理由を綴る。

2 日前

エージェンシー・レポートカード2023:カラ

改善の兆しはみられたものの、親会社の組織再編の影響によって、2023年は難しい舵取りを迫られたカラ(Carat)。不安定な状況に直面しつつも、成長を維持した。

3 日前

私たちは皆、持続可能性を前進させる責任を負っている

持続可能性における広告の重要性について記した書籍の共著者マット・ボーン氏とセバスチャン・マンデン氏は2024年のアースデイに先立ち、立ち止まっている場合ではないと警告する。