Staff Reporters
2023年9月07日

ゲーム業界の市場動向とゲーム内広告の現状

報告書によれば、昨年はゲーム内広告に対するユーザー感情が全体的に悪化したが、リワード動画広告とプレイアブル広告は、比較的好まれる広告フォーマットだったという。

ゲーム業界の市場動向とゲーム内広告の現状

出典:data.ai及びインターナショナル・データ・コーポレーション(IDC)による「ゲーム注目ポイント調査2023」(Gaming Spotlight 2023 Review)

  • 2022年第3四半期の米国モバイルゲーマーアンケートによると、ゲーム内モバイル広告に対する感情は、2021年第3四半期に比べ、全体的に悪化したことが分かった。新規ユーザーを獲得するには、パフォーマンス上位の広告ネットワークやフォーマットに常に注意を払う必要があるだろう。なお、米国では、リワード動画広告とプレイアブル広告が比較的好まれる広告フォーマットだった。
  • 広告収益型のゲームにとっては、飽和状態が問題になるかもしれない。また米国では、広告の種類が増えるにつれて、ゲーム内広告に対する消費者の嫌悪が低下する傾向にあった。そのため、ゲーム内で表示される広告の種類やフォーマットを多様化させることが推奨される。
  • 「広告疲れ」に対抗するには、ユーザーのデモグラフィック情報を活用して、特定のユーザー層から最も好感を持たれている広告の種類とフォーマットを特定するのが良いだろう。また、アップルのATTフレームワークがローンチされて以来、インストール単価は上昇し、ユーザーの定着率も低下してきた(しかも、グーグルのプライバシーサンドボックスも2024年前半にはローンチ予定だ)。コンテキストデータは、この変動の激しい環境で広告主が成功するためにますます重要になってきている。
  • モバイルは、引き続きゲーム業界最大の機会であり続けるが、プライバシー規制の継続的な更新や不安定なマクロ経済、競争の激化などによって、新規ユーザーの獲得と成長は難しくなっている。新規ユーザーを見つけて、それを収益の成長につなげることが益々難しくなっているからだ。
 
 

モバイル支出の落ち込みは山を越えたが、マクロ経済の状況とプライバシーに関する懸念は依然として残る

モバイルゲームの消費支出は、2023年に1,080億ドルに達する見込みだ。歴史的にみても、ゲームの支出は、経済の低迷期にも高い回復力を示している。しかし、ATT(アプリトラッキングの透明性)フレームワークの導入とフィンガープリンティングの制限により、ヘビーユーザーをターゲットにしたり、アプリ内購入(IAP)で稼いだりすることが難しくなってきている。さらに重要なこととして、中国における10代のモバイル利用制限がより厳しくなっていることが挙げられる。この結果、ゲーム支出は対前年比2%減と僅かではあるが、減少が予想されている。

家庭用ゲーム機の消費支出は、PS5とXbox Series X/Sに対する支出の増加(但し、Switchに対する支出は減少)により、2023年には、3%増の430億ドルに達する見込みだ。

PCおよびMacにおけるゲーム消費支出は、主にサブスクリプションベースでの収益増加により、2023年は、4%増の400億ドルに達する見込みだ。

携帯ゲーム機の消費支出は、Steam Deckなど一部の携帯ゲーム機へ関心は高まっているものの、Nintendo Switch Liteへの関心が低下した結果、今年は、20%減の30億ドル未満になる見込みだ。

 

APAC(アジア太平洋)市場が、モバイル、PCMacにおけるゲーム収益の成長を牽引

  • 最近のAPAC地域のモバイル支出の増加に関しては、韓国の占める割合が大きい。世界の、その他の地域では、ブラジル、トルコ、メキシコが成長を牽引している。
  • 日本では、Switch Liteへの関心が大幅に低下した。引き続きNintendo Switch(有機ELモデル)が消費全体の大部分を占めていることが、その主な要因だ。なお、コンソール型の携帯ゲーム機の収益はすべての地域で低下している。
  • サブスクリプションベースのゲームへの支出増加により、PCMacのゲームは対前年比でシェアを伸ばしている。この成長は、紛争や世界的なインフレーションによって困窮した世界の貧しい地域からの寄与もある。
  • 家庭用ゲーム機の地域別シェアの変動は、北米におけるPS5およびXbox Series X/Sの消費支出の増加と、ウクライナの戦争や主要市場のインフレ問題その他の懸念によって、北米以外の地域の消費が低迷したことによって生じたものだ。
 

2023年、成長加速に向けたキーポイント

  • モバイルは、2022年に一時的な落ち込みがあったにもかかわらず、引き続き、デジタルゲーム消費の成長を牽引し続けている。モバイルゲームは、世界中で好感度の高いフォーマットとして認知され、クロスプラットフォーム体験の中心的存在となっている。そのため、その中で注目を集めることが益々難しくなっている。
  • モバイルはゲームの民主化を実現した。ハイパーカジュアルゲームから、マッチ3(パズルゲームの一種)、オープンワールド系アドベンチャーゲームのコアタイトルまで、あらゆるゲーマーが各自のニッチな嗜好に合ったゲームを選べるようになった。モバイルゲームは、最も多種多様なユーザー層である「新しいゲーマー」たちが参加できる舞台を整えたようだ
  • 2023年上半期に好結果を収めたゲームには、さまざまなものがあった。例えば、持ち歩きのモバイル体験を利用したボードゲームの発売や、ひとつのジャンルを確立した「原神」の人気に触発され開発された待望のRPGのリリース、安定したマッチ3の市場を三年足らずで塗り替えた有名なタイトル、世界で最も人気があるスポーツのIP(知的財産権)を活用したクロスプラットフォームのスポーツゲームシリーズなどだ。強力なIP、市場の勢い、さまざまなイベントの活用などが、成功のための普遍的テーマになるだろう。

 

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

関連する記事

併せて読みたい

3 日前

世界マーケティング短信:Cookie廃止の延期、テスラの人員削減

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

4 日前

大阪・関西万博 日本との関係拡大・強化の好機に

大阪・関西万博の開幕まで1年弱。日本国内では依然、開催の是非について賛否両論が喧しい。それでも「参加は国や企業にとって大きな好機」 −− エデルマン・ジャパン社長がその理由を綴る。

2024年4月23日

エージェンシー・レポートカード2023:カラ

改善の兆しはみられたものの、親会社の組織再編の影響によって、2023年は難しい舵取りを迫られたカラ(Carat)。不安定な状況に直面しつつも、成長を維持した。

2024年4月23日

私たちは皆、持続可能性を前進させる責任を負っている

持続可能性における広告の重要性について記した書籍の共著者マット・ボーン氏とセバスチャン・マンデン氏は2024年のアースデイに先立ち、立ち止まっている場合ではないと警告する。