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カンヌのグランプリ取り消し作品をめぐり、米上院議員が提訴
今年のカンヌライオンズでコンスル(Consul)のキャンペーンが、AIをケースフィルムに不正使用したことが理由でグランプリ受賞を取り消しになった件で、米ノースカロライナ州の上院議員であるデアンドレア・サルバドール氏が提訴した。アドエイジが報じた。
訴えられたのは、コンスルの親会社であるワールプール(Whirlpool)、制作を担当したサンパウロのDM9とその親会社であるDDBならびにオムニコム・グループ(Omnicom Group)など。
サルバドール氏は2018年に「TED Talks(テッドトークス)」で講演した際の動画が、同意なしにケースフィルムに使用されたことで、自身の名前やイメージ、肖像権、人格権が侵害されたと主張。「ショックを受け、侵害されたと感じ、ひどく動揺した」と述べ、「多大な精神的苦痛を被った」ことに対し
金銭による賠償を求めている。
米レストランのロゴ刷新に反発、旧ロゴが復活
米飲食チェーン「クラッカー・バレル(Cracker Barrel)」がロゴを変更し、樽に寄りかかる男性の姿を外して簡略化し、字体もモダンなものに変えたところ、株価が大幅下落。トランプ米大統領はSNSに「旧ロゴに戻し、顧客の反応(究極の世論調査)に基づいて過ちを認め、これまで以上に優れた経営をすべき」と書き込むなど反発が起きた。
その後、同社は新ロゴを撤回し、旧ロゴを復活させると発表。トランプ大統領も「ファン全員がとても感謝しています」と投稿し、この動きを歓迎した。
ブランドアイデンティティーを手掛けるマッチスティック(Matchstic)の共同設立者、ブレイク・ハワード氏はリンクトインに「クラッカー・バレルは、ノスタルジアそのもの。それがなければ、ただのゴールデン・コーラル(ビュッフェ形式のチェーン店)なので、もっと個性を強調したいところだ」と書き込んだ。「濃厚なグレービーソースはどこ? シナモンロールのような曲線は? 南部の魅力や、ロードトリップにまつわる小物類は? 欲しいのはロッキングチェアとロックキャンディーであって、ミニマルでグルテンフリーなロゴにローズマリーの香りを添えたようなものは要らない。そういうものは都会のお店に取っておくべきで、田舎のお店には合わない」。
エルメスが中国で公開したアニメ動画に批判
エルメス(Hermès)が中国で、スタジオジブリを彷彿とさせる短編動画をSNSで公開した。若い世代に訴求しようと、米アーティストのアニー・チョイ氏とコラボレートし、メッセンジャーバッグ、木製サンダル、テーブルウェアを紹介する3本の動画を制作。だが、AIが生成したものなのかという疑問の声や、「エルメスの高級志向とはあまりにかけ離れている」という批判が小紅書(RedNote)に書き込まれた。
高級ブランドがアニメーションを活用した成功事例はいくつかある。最近ではラルフ ローレン(Ralph Lauren)の『ポロ・ベア・クロニクルズ:オペレーション・ブラックタイ』が好評を博した。2021年にバレンシアガ(Balenciaga)が『ザ・シンプソンズ』とコラボレートした動画も、米ヴォーグ誌のアナ・ウィンター編集長や、キム・カーダシアンなど著名人が登場し、話題になった。
では、なぜ今回エルメスのキャンペーンには批判が集まったのか。VO2のアジア太平洋地域担当マネージングディレクターであるソフィー・クーロン氏は「アニメーションは視覚的に美しかったものの、それを損なう要因が3つあった」と指摘する。まずジブリ風のノスタルジックなイメージが、高級品とはなじまなかったこと。2つ目が、小紅書のように広い層が利用するSNSで公開されたため、ターゲットでない人々にもコンテンツが届いたこと。そして3つ目が、真のターゲットの間でさえも「子どもっぽい」とされるトーンが、ブランドの品格を損なったことだ。「はっきりとした文脈や、意味のあるストーリーテリングがなければ、アニメーションは感情への訴求が弱く、Z世代が共感できる物語というよりも夢のシーンのようにしか見えません」。
インナーチャプター(Inner Chapter)の創設者であるジュリアン・ラプカ氏は「今回のエルメスのキャンペーンは文脈から乖離し、力強い芸術的基盤が欠如していたため『子どもっぽく』映り、ラグジュアリーの象徴するものとは矛盾したように感じます」とコメント。アニメーションが使われたことが原因ではなく、文化的な基盤がなければ、メッセージを高めるどころか弱めてしまう危険性があると述べた。
(文:田崎亮子)