Sara Nelson
2021年10月01日

今見直される、ブランドキャラクターの効用

ブランドの広告にマスコットやキャラクターを採用すると、収益や顧客との感情的なつながりが、最大41%もアップするという。

今見直される、ブランドキャラクターの効用

これは、英クリエイティブスタジオ、ムービング・ピクチャー・カンパニー(MPC)による、「キャラクターを使った広告の効果に関する調査結果」をまとめたホワイトペーパーで明らかにされたものだ。

同調査では、マスコットやキャラクターを使わないキャンペーンは、市場シェアを拡大できる可能性が29.7%にとどまることも示された。

MPCと言えば、「ジャングル・ブック」をはじめとした映画のキャラクター制作でアカデミー賞を獲得したほか、カンヌライオンズの受賞歴(英百貨店ジョン・ルイスの「The boy and the piano」や、ヘネシーの「The seven worlds」)などでも知られている。そのMPCが、学者やアナリスト、市場調査会社、広告エージェンシー、同業他社などから収集した情報をもとに、キャンペーンで用いられたキャラクターがブランドの利益やSOV(シェアオブボイス)、エンゲージメントに与える影響について調査した。

調査では、ここ10年間で、きわめて高い効果を発揮したキャラクターをいくつか取り上げ、分析の対象としている。たとえば、ジョン・ルイスの「Monty the Penguin(ペンギンのモンティ)」や、自動車保険ガイコのゲッコー(やもり)、独ディスカウントストア大手アルディの「Kevin the Carrot(ニンジンのケビン)」、サムスン電子のダチョウ(「Do What You Can’t:“できない”ことに挑戦しよう」キャンペーンに登場)、英携帯電話会社O2の「Bubl」などだ。

この調査により、キャラクターを起用した長期的なキャンペーンでは、収益が34.1%増加するのに対し、キャラクターを起用しないキャンペーンでは増加率が26.2%にとどまることが明らかになった。また、新規顧客の獲得については、キャラクターを用いた場合は平均40.9%増加したが、キャラクターを用いなかった場合は32%増にとどまった。

興味深いことに、キャラクターを保有するブランドが、実際にキャラクターを使用した比率は、テレビCMでもわずか63%で、フェイスブックでは25%、ツイッターでは21%にとどまることもわかった。

また、感情に訴えかけるキャンペーンは、そうではないキャンペーンに比べ、3年間でほぼ2倍の収益を生みだす。

なお、1992年にはキャラクターやアニメを用いたキャンペーンの比率が全体の41%を占めていたが、現在ではわずか12%にまで急落している。英国では、キャラクターが登場する広告は7%にすぎず、米国に至ってはたったの4%だ。

MPCの最高経営責任者(CEO)マーク・ベンソン氏は、次のように述べている。「キャラクターや空想の生き物は、エンターテインメントにおいてだけではなく、広告においても見る人の心を強く動かすはずだと、私たちは信じてきました」

「そして今回の調査は、そうした仮説を検証するために行われたものです。メディアは現在、かつてないほど混沌とした状況であり、ブランドは広告を通して、何とかそこに割って入ろうと苦心しています。2020年、世界中が新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われるなか、マーケターも前代未聞の大きな困難に直面しました。そこで私たちは、ブランドが次のキャンペーンの意思決定をする際に役に立つ、実践的な情報を提供したいと考えたのです」

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

関連する記事

併せて読みたい

6 時間前

世界マーケティング短信:Cookie廃止の延期、テスラの人員削減

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

1 日前

大阪・関西万博 日本との関係拡大・強化の好機に

大阪・関西万博の開幕まで1年弱。日本国内では依然、開催の是非について賛否両論が喧しい。それでも「参加は国や企業にとって大きな好機」 −− エデルマン・ジャパン社長がその理由を綴る。

2 日前

エージェンシー・レポートカード2023:カラ

改善の兆しはみられたものの、親会社の組織再編の影響によって、2023年は難しい舵取りを迫られたカラ(Carat)。不安定な状況に直面しつつも、成長を維持した。

2 日前

私たちは皆、持続可能性を前進させる責任を負っている

持続可能性における広告の重要性について記した書籍の共著者マット・ボーン氏とセバスチャン・マンデン氏は2024年のアースデイに先立ち、立ち止まっている場合ではないと警告する。