David Blecken
2017年8月28日

全日空、日本の伝統文化を活写

全日空(ANA)が新たに展開するコンテンツマーケティング。日本の伝統文化を詳しく、そして分かりやすく取り上げて出色だ。

全日空、日本の伝統文化を活写

コンテンツへの情熱にかけては、航空業界でANAを凌ぐ企業はないだろう。昨年は日本の祭りを詳しく紹介した「Is Japan Cool? – Matsuri」 や、広告賞を受賞したバーチャル美術館「IJC Museum」をリリース。今回は様々な日本の伝統文化を題材に取り上げる。

テーマは、「道(Dou)」。英語を母国語とする人々にとってこの語はあまり大きな意味を成さないが、ある程度の好奇心をかき立てるだろう。ANAはそのコンセプトを柔道や弓道といった「武道」、書道や茶道など「芸道」の2つのカテゴリーに分けて表現する。イントロダクションでは、「これら無形の文化財を分かりやすく若い世代に伝承していく。その一助になれば」と記す。

コンテンツでは剣道や能、茶道など異なる分野の9人の達人たちをフィーチュア。ユーザーが知りたい分野の達人(例えば居合道の町井勲氏は、時速160㎞のボールを刀で切ることで知られる)を選ぶと、人物紹介やその究極の技、ビデオインタビュー、インタラクティブなデモンストレーションなどを見ることができる。

この作品は、クリエイティブエージェンシー「猿人(Enjin)」とウェブ制作会社「バードマン」が手がけた。

Campaignの視点:
ANAのコンテンツはキメ細かさで定評があるが、まさしくその通りの内容だ。人々の注意力が長続きしない今の時代、こうしたクリエイティビティーはリスクにもなり得るが、この作品はじっくりと見る価値が十分。日本の伝統文化は多くの訪日観光客にとって最大の魅力だが、時として理解しにくいものがある。その継承者たちを取り上げ、その人となりを紹介することは、確かに文化を分かりやすく伝える役割を果たすに違いない。

ただ以前にも述べたが、ANAには「日本はクール?(Is Japan Cool?)」というタイトルを再考してほしい。「クール」という形容詞はこれらの伝統文化を表すには空虚に響く。日本は文化の発信源としてもっと自信を持ってよく(それを大声で喧伝することは遠慮しているようだが)、こうした言葉を敢えて使う必要はないだろう。いずれにせよ、訪日客の楽しみである文化的財産の魅力を増幅させつつ、航空会社が差別化に努力することは素晴らしい試みだ。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:岡田藤郎 編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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