David Blecken
2017年7月03日

「幸せになる」ベンチ

俯いてスマートフォンばかり見ていないで、上を向こう。ついでにアイスクリームも食べて、リフレッシュしよう −− ロッテからのメッセージは、極めて単純明快だ。

言うまでもなく、習慣的にスマートフォンを見るのは決して首に良くない。更に気持ちが塞ぎがちになるのも、このキャンペーンが訴える通りだろう。

そんな時の気分転換にと、「小さな幸せ」の象徴であるアイスクリームを作るロッテが、電通とともに「爽(So)ハッピーベンチ」を考案した。もちろん「爽」は、人気のアイスクリームの名に由来する。

このベンチの特徴は、座った時に目線が自然と上に行くようデザインされていること。製作したのはソーシャルプロダクトデザイナーの太刀川瑛弼氏。慶大大学院で幸福科学を研究する前野隆司教授が、開発に協力した。同氏曰く、「上を向くことで人が幸せになれることは調査で立証されています」。

ハッピーベンチは企業にも無償で提供され、これまでロレアルなど10社が導入した。いずれも社員の健康面を考慮し、労働慣行の改善を目指す企業だ。電通広報部は、「依頼があれば増産を検討します」と述べている。

Campaignの視点:
このようなPRは単に奇をてらっただけ、と取り合わない人もいるだろう。確かにそうかもしれないが、そのシンプルさ、そしてブランドの持つメッセージがはっきり伝わる点を我々は評価したい。また、「楽しさ」も醸していて、低コストというメリットもある。このPRが直接アイスクリームの売上を伸ばすかどうかは分からないが、屋外用の椅子やテーブルを作るデザイナーにインスピレーションを与えることだけは間違いないだろう。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

1 日前

世界マーケティング短信:TikTokが米国向け新アプリ開発へ

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

2 日前

成熟期を迎えたマーケティング

ヒューレット・パッカード(HP)社のグローバルチーフブランドオフィサーが、今年のカンヌライオンズで会得したアジアのマーケターへの学びを綴る。

3 日前

カンヌライオンズ、AI、そして信頼性

AIの不正使用を理由としたカンヌライオンズ史上初のグランプリ受賞取り消しは、非常に重要な転機となった。だがこれはAI時代のマーケティングにおける大転換の序章に過ぎないのだろうか?

2025年7月04日

世界マーケティング短信:カンヌのグランプリ受賞が取り消しに

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。