Ben Bold
2023年8月03日

ツイッターのロゴがXに:広告業界の反応は?

Xは単なるマークだろうか、それともツイッターに留めを刺すための楔だろうか?そして広告主は、マスク氏によるツイッターの青い鳥の消滅にどのような反応を見せるだろうか?

ツイッター:新しいロゴと以前の青い鳥
ツイッター:新しいロゴと以前の青い鳥

イーロン・マスク氏による、ツイッターの青い鳥のロゴを廃止するという決定は、オンライン上で多くの議論を引き起こした。何でも言えるオンライン上の議論では、意見が激しく分断している。

確かなことは、モンティ・パイソンの「死んだオウム」のパロディのように、ツイッターの青い鳥が寿命を迎え、破滅的な混乱に終止符を打ったということだ。かつて鳥であったものは、今、現実のXに置き換えられた。

一方、マスク氏のツイッターでの発表に対して、テック業界では驚きの声が溢れた。例えば、ピーター・ヤング氏は、マスク氏が土曜日と日曜日にロゴデザインを提出するよう要請したことに触れ、「週末の間に、ユーザーからのロゴ提案が行われたことに、かなり驚いた(当惑した)」とツイートしている。

一部のコメントは、その新しい「仮の」ロゴは、週末に誰かが思いついたものとほとんど同じだと指摘していた。また一方では、このデザインは誰かのアバターに似ているというコメントも寄せられていた。

マーケティング企業ザ・バーバーショップ(The Barber Shop)の創設者であるディノ・マイヤーズ・ランプティ氏は次のように述べている。「そう、Xはマークであり、染色体であり、グラフの座標軸でもある。方程式の中の未知数であり、計算式の乗数でもある。このロゴは無彩色で幾何学的で尖っており、エレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)のアーティストKxliderからの盗用のようでもある」

気まぐれに実行された愚行

他にも、例えば元ツイッターのEMEA(欧州・中東・アフリカ)地域副社長のブルース・デズリー氏は、鳥がいなければ鳥のさえずり(つぶやき)も無くなることから、「ツイート」という用語も消えてしまうだろうと指摘した。

デズリー氏はCampaignに対して、マスク氏は「自分の前に誰かがいたという痕跡を焼き払ってしまいたいのだろう。なぜならそれは、彼以外の誰かがツイッターを作ったということを、人々に思い出させるからだ」と語った。

彼はさらにこう述べた。「これは自らのエゴとブランドに対する醜い防衛本能を示している」しかし、「報道機関は『誰かがXにツイートした』とか、『誰かがXした』などという彼の取り巻きが喜びそうな表現は使わないだろう。彼らは単に『ソーシャルメディアに誰かが投稿した』と言うだけだ」

「これまでも、いくつかのひどいリブランディングはあったが、今回の気まぐれなリブランディングは、それらすべてを合わせたよりもひどい」と彼は付け加えた。

マスク氏は激情的で分裂的な行動きで知られる人物であり、炎上しやすい言動や過激な物言いでもよく知られている。この特徴リストに「鳥恐怖症」という項目を追加しても良いだろうか?多分、大丈夫だろう。

但し、ブランドの専門家の間では判断はまだ出ていないようだ。インターブランドのエグゼクティブクリエイティブディレクターであるスー・ダウン氏は、「新しいリーダーが登場するときは、しばしば劇的でダイナミックな変化が見られるものだ」と主張する。

ダウン氏はさらに続ける。「しかし、ツイッターからXへの名前とアイデンティティの変更は、ユーザーとそのブランドの関係や、ブランド価値、新興勢力との競争に対する立場など、重要な側面を見落としている可能性がある」「理想的なリーダーシップとは、経済的判断を超えてビジネスを推進し、優れた顧客体験と堅固な信頼関係を構築することだ」

「だがそれでも、この革新的な変化は、ツイッター傘下では負のイメージが制約となり、導くことが難しかった新たな領域に、Xを導くための戦略的な動きと見ることもできる」

ブランディングエージェンシー、コーリー・ポーターベル(Coley Porter Bell)の最高経営責任者であるヴィッキー・ブレン氏も、同様の見解を示している。マスク氏は「オールインワンアプリ」を立ち上げる意欲を持っており、チームはXのことを「インタラクティビティの無限の未来」と位置付けていると指摘した。

彼女は、Xの意味合いとして、さまざまな例を挙げた。例えば、スーパーパワーを持つヒーローのXメンや、1800年代、科学者ヴィルヘルム・レントゲンが、まだ名称のなかった新しい放射線に名付けた「X線」などだ。

実際、Xという名称は、イーロン・マスク氏のブランドと密接に結びついている。Xはマスク氏にとって重要な意味を持っているようだ。企業名のスペースX、息子の名前のX Æ A-12、そして今回のツイッターの新名称だ。イーロン・マスク氏の企業複合体は、今回のXにもハロー効果をもたらすかもしれない。

彼はよく言えば、革新者であり、先見の明のある大胆で恐れ知らずの人物で、他の人が行かない領域にチャレンジする人物だが、悪く言えば、衝動的で分断を招きやすく、気まぐれで不安定だ。したがって、人々がXをどのように見るかは、イーロン・マスク氏をどう見るかなのだろう。

アイリス(Iris)の最高戦略責任者、ベン・エッセン氏は、ツイッターのロゴの変更を「ギャップ(Gap)以来の最悪のリブランド」だと形容し、こう付け加えた。「もしこれを担当したのがエージェンシーなら、とっくにクビでしょう。CX(顧客体験)の失敗、一貫性のないブランディング。何という混乱だろう」

しかし一方、彼は、これはマスク氏の意図的な動きだと主張する。マスク氏は「数十年先を見据えた長期的な戦略ビジョンを掲げ、それを実現してきた実績がある」と述べた。さらに、「テスラの価値のかなりの部分は、マスク氏が描いた、新しいモビリティ像に根ざしており、彼はチームと投資家に、既存の枠組みを超えたモビリティの姿を垣間見せ、それを実現する斬新な方法を示したのだ」と付け加えた。

エッセン氏も、テスラやスペースXを引き合いに出し、それらは「他のどんな企業にも見られないような、垂直統合のまったく新しい企業に変貌した」と主張した。

「言い換えれば、これはツイッターのリブランドなどではない」と説明した。「これはまったく新しい企業の誕生なのだ。ハードウェア、ソフトウェア、そして「脳のハッキング」を融合させ、前例のない完全にユニークなコミュニケーション手段を提供しようとするものだ」

広告主の大量離脱

マスク氏がツイッターの経営を掌握し、ツイッターがXホールディングの一部となった4月以降、多くの広告主が出稿を取りやめ、ツイッターは広告収益を失い続けている、という報道がいくつも出ていた。ニューヨーク・タイムズは6月に、米国ツイッターの広告収益が、4月初旬から5月までの間に前年比で59%減少したと報じた。このニュースは、ちょうど新CEOのリンダ・ヤッカリーノ(Linda Yaccarino)氏が着任した時期と重なっている。

デズリー氏は、このリブランドでは、広告収益の減少を食い止めることはできないと主張する。

「私が目にしているツイッター広告が、何かを示しているとするなら、ツイッターは、ショッピングチャンネルから移行してきた広告主と、50人のフォロワーを獲得するために小遣いを使うペテン師たちから主に収益を得ているということだ」と述べた。

一方、ワンダーマン・トンプソン・コマースのソーシャル担当責任者であるクロエ・コックス氏は、ロゴの変更について「大きな賭け」だと評し、マスク氏のいつもの「いじくり回しによって、忠実なユーザーたちの間でも不満が高まっている」と言い添えた。例えば、一日に閲覧できるツイート数に制限がかけられ、「ユーザーとマーケター両方の怒り」を引き起こしたことを例に挙げた。

一方メタは、ツイッターを取り巻く不協和音に乗じて、7月上旬にスレッズ(Threads)をローンチし、最初の数日で1億もの登録を記録した。

しかし、英国オグルビーの広告戦略責任者であるマシュー・ワクスマン氏は、スレッズのアクティブユーザーベースは「1週間後には半分に減少した」と指摘し、「ツイッターには、鳥(のロゴ)の有無にかかわらず、明らかに深く根ざした何かがあり、簡単に代替できるものではないようだ」と述べた。

「それはチョコバーではないのだ(中略)メディアプランナーやブランドから選ばれるかどうかは、プラットフォームの進化と、提供できるデータ、サービス次第だ。ロゴの変更は、進化を進める間も、このプラットフォームを念頭に残してもらうための最新の演出(例えば、このような記事を含め)のひとつだ」と彼は付け加えた。

メディア代理店ザ・カイト・ファクトリーのデジタル執行パートナーであるベン・フォスター(Ben Foster)氏は、このリブランドはそれほど驚くことでもないと主張した。「ツイッターが引き続き赤字を出し続けている中、イーロン・マスク氏はアプリを刷新し、ウィーチャット(WeChat)的な機能を実装する計画を加速させようとしている」

彼はこのように付け加えた。「マスク氏は、ツイッターブランドに関連付けられたネガティブな意味合いをリセットし、認識を一新しようとしている。そのためには、新ブランドの下で、迅速に新機能を導入することが必須だ。そうでないなら、新しいロゴは単なるロゴに過ぎなくなる。積極的な(責めた)製品ロードマップが実現し、その効果が見極められるまでは、このプラットフォームに対する広告主の態度はあまり変化しないだろう」

マイヤーズ・ランプティ氏には、答の分からない重大な疑問があるのだという。「広告収益が低下する中、スレッズのローンチやザッカーバーグ氏との争いなど色々あるのに、なぜ彼らは、今がツイッターをXにリブランドするタイミングだと考えたのだろうか?」と彼は問う。

「どんなリブランドでも、ストーリーこそが最も重要な要素だ。今現在あるストーリーは、変化を起こすのに十分な理由になっていない」ランプティ氏にとっても、他の多くの人にとっても、今回の一件は、「未だに解決されない謎」のままのようだ。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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