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2018年5月18日

世界マーケティング短信: WFA憲章、電通決算、WPPの混乱

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをまとめてお届けする。

デイヴィッド・ウェルドン氏
デイヴィッド・ウェルドン氏

WFA、デジタル広告の変革を要求

世界広告主連盟(WFA)は17日、デジタルエコシステムがより円滑に機能するよう、「Global Media Charter(グローバルメディア憲章)」を東京で発表した。草案はP&Gやユニリーバといった世界有数の広告主が協働。8つの指針から成り、ブランドやエージェンシー、メディアオーナーのより公正な関係構築と、デジタル広告の改革を目標とする。

その内容は、広告の不正、ブランドの安全性の厳正な確保、広告のビューアビリティの最低基準、サプライチェーンにおける透明性、第三者による検証と測定、「壁に囲まれた庭(独占を目的とした情報の限定)」の撤廃、データの透明性の改善、消費者のエクスペリエンスを向上させるステップ −− 以上の事柄に関していかなる違反も許さないというもの。

こうした目標はやや曖昧でもあるが、WFA理事長のデイヴィッド・ウェルドン氏は「まだ作業の途上に過ぎない」とコメント。この数カ月間にデジタルメディアを悩ませた様々な不正事件を列挙し、「我々にとって譲れない一線を示すときであり、クライアントやエージェンシー、メディアオーナー、プラットフォーム間の関係のバランスを修復し、混乱を生んだ業界に再び調和を呼び戻すときだ」と述べた。

「バランスが崩れている」というウェルドン氏の意見は正しい。今や世界中のマーケティング費用の4分の1が、フェイスブックとグーグルの2社に集中している。劇的な変革は必然的に起こるのかもしれない。

電通、デジタルの売上が伸びるも利益は減少

電通の第1四半期実績が発表され、電通と電通イージス・ネットワーク(DAN)はデジタル分野の売上を増やしたものの、労働環境改革や計画投資などの影響で営業利益は減少した。

第1四半期の収益は、DANの新事業もあり前年同期に比べ5.7%の増加。オーガニック成長は2.1%で、売上総利益のうちデジタルメディアが電通で23%、DANで61%を占めた。

その一方、調整後営業利益は対前年比で13%の減少。電通はこの結果を既に2月に予測しており、労働環境改革のためのコスト増、DANのプラットフォームやテクノロジーへの世界規模での投資をその要因としている。DANの業績は欧州・中東・アフリカで順調だが、アジア太平洋地域では3%ほど減少した。

電通が、公約である労働環境改革を推し進めていることは良い知らせだ。ある社員はCampaignに対し非公式ながら、「この変革が良い効果を生んでいる」と語った。同時に、投資規模の大きさは問題解決の必要性を顕著に表している。忘れてはならないのが、非効率性や過重労働といった課題に直面しているのは電通だけではないということ。他の広告代理店が改革のためどれだけコストをかけているのか、気がかりなところだ。

WPP、会長解任の可能性

議決権行使助言会社グラス・ルイスはWPPの株主たちに対し、来月行われるロベルト・クアルタ会長の再任投票に反対するよう勧告した。クアルタ氏は2015年からWPPの会長を務め、先月のマーティン・ソレル氏の辞任によって暫定的に執行会長となった。WPPはソレル氏が辞任に至った個人的不正問題を調査しているが、クアルタ氏はその結果を公表しないことを決定。グラス・ルイスは「重大な隠蔽だ」と非難している。

WPPスポークスマンはこれに対し、「ビジネスに安定が求められているときにクアルタ氏に反対票を投じれば、株主にとって不利益となる」と発言。WPPはまだソレル氏の後任を決定していない。フィナンシャル・タイムズ紙は、候補者としてAOLの前CEO、ティム・アームストロング氏が浮上していると報道した。

フェイスブック、データ悪用で200のアプリを差し止め

今週、フェイスブック(FB)のプロダクトパートナーシップ部門の責任者が「2014年のデータポリシー変更前に、膨大な情報にアクセスした何千ものアプリケーションを調査している」とブログ上で明かした。FBは個人情報の不正使用に関してより綿密な調査を実施、これまで200のアプリを差し止めとした。

FBの情報漏洩問題が公になるきっかけとなったケンブリッジ・アナリティカ社は、廃業。にもかかわらず、多くのプラットフォームやマーケターは今でも個人情報の問題を真摯に受け止めていない。FBのような巨大企業の関与の是非にかかわらず、こうしたスケールの不正が明るみに出るのは紛れもなく時間の問題だったと言えよう。だが今週のDigiday(ディジデイ)によると、広告主たちはケンブリッジ社の不正の意味合いよりも、FB上の広告のROI(投資利益率)低下を懸念。アディダスやブッキング・ドットコムといった数多くの主要ブランドはメディア向け予算の大半がFBに使われていることを問題視し、同社により説明責任を果たすよう求めているという。

マーケターは、マーケティングすべき消費者をマーケティングすべし

英国のCMOカウンシルの調査によると、現在の顧客による収益見込みを「達成している」と答えたマーケティング責任者は、179名のうちわずか13%だった。この数字は過去10年で、ほとんど変わっていない。

なぜこのような結果になるのか。根本的な原因は、企業が消費者への電子メールの作成に関して不得手ということだ。CMOのスポークスマンであるリズ・ミラー氏は、「ブランドははっきりとしたマーケティングコミュニケーションのチャンスを与えられているにもかかわらず、それを逃している」と話す。

「マーケターは、現在の顧客との電子メールでのコミュニケーションを『自動化できる機械的仕事』と考えているようです。対話を続けるための価値あるチャンス、とは捉えていません」と同氏。「このタッチポイントを見落とすことは、収益と成長のチャンスを見逃すことです」。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

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