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WPP、グーグルのAI技術活用に4億米ドル投資へ
WPPが、グーグルと5年間のパートナーシップを締結し、4億米ドルの投資を行う。グーグルのAIを、WPP独自のAIプラットフォーム「WPP Open」に統合することに重点を置き、提携によってクリエイティブ、メディア、コマースを統合し、業務を数カ月単位から数日に短縮するとともに、キャンペーンのリアルタイムでのパーソナライゼーションを大規模に実現することを目指す。AIによってコンテンツの制作期間は最大で7割短縮され、アセットの利用率は倍以上になると見込まれる。
「このパートナーシップは、クライアントにとっての可能性を再定義することになるでしょう」と、WPPのシンディ・ローズCEO。「カスタムメイドのAIソリューションを提供し、極めて関連性の高いキャンペーンをかつてない規模とスピードで実現することで、マーケティングのあらゆる側面でのイノベーションを加速させ、成長とインパクトを促進します」。
グーグルクラウドのトーマス・クリアンCEOは「生成型AIとエージェント型AIの力を活用し、ビジネスの成果を変革します」と述べ、同社のAIに最適化された技術スタックはWPPが「今日のブランドのために、マーケティングの未来を創造する」のに役立つだろうと語った。
両社はまた、生成AI、ロボット工学、クリエイティブコーディングなどの分野で、2030年までに1000名を超える若手技術者を育成する予定。
WPPは近年、ピュブリシス・グループとオムニコム・グループの合併など、競合他社からの圧力にさらされている。今回の提携は、他の広告大手を出し抜こうというWPPの大胆な戦略を示すものとなった。
ハヴァス、電通Gの海外事業の買収や提携に関心
ハヴァスのCFO兼COOであるフランソワ・ラローズ氏は第三四半期の決算発表にて、電通グループの海外事業の一部を買収あるいは提携することに関心を示した。「世界中に素晴らしいネットワークを持つ、非常に強力で大きな資産」と評するが、「規模が大きすぎるため」事業全体の買収はできないという。
「電通から連絡は受けていません」とラローズ氏。「電通は過去2~3年の間にいくつかの買収を行い、世界中に素晴らしいネットワークを持つ、強力で大きな資産であると認識しています」。
また、「もし何らかの提携や、特定の資産の買収を提案されたら、もちろん検討します。ネットワーク全体ではありませんが、一部、あるいはネットワークを構成するエージェンシーとのパートナーシップには関心を持つかもしれません」とも述べた。
電通グループの代表執行役 社長 グローバルCEOの五十嵐博氏はこの夏、海外事業について「包括的かつ戦略的なパートナーシップを含めたあらゆる選択肢を検討しており、これを推進することで、企業価値向上を加速させていきます」とコメントしている。また、同社が売却を打診していると報じられた際には「当社は、海外事業について経営基盤の再構築や不振ビジネスの見直しを引き続き進めております。また同時に、企業価値向上に向けたあらゆる選択肢を検討していますが、決定した事実はありません」との声明を出している。
オムニコム、APACの成長率が下落
オムニコムが第3四半期の業績を発表し、収益は40.4億米ドル(前年同期比+4.0%)、オーガニック成長率は+2.6%だった。
地域別では、米国の同期のオーガニック成長率は+4.6%、英国は+3.7%。中南米は+27.3%、中東&アフリカは+5.9%と好調。一方、北米(米国を除く)は-0.2%、欧州は-3.1%でマイナス成長だった。アジア太平洋は、メディア事業とプレシジョン・マーケティング(精密マーケティング)の強さによって、第2四半期の成長率が+6.5%と好調だったが、第3四半期は-3.7%と下落している。
ジョン・レンCEOは「来月にはインターパブリックの買収が完了し、世界をリードするマーケティングとセールスの会社が誕生する見込みです」と語る。「業界で最も優秀なチームと、データ、メディア、クリエイティビティー、プロダクション、テクノロジーにおける戦略的優位性によって成長を加速させる強力なプラットフォームを、共に築いてまいります」。
マスターカードのラジャマナーCMOが辞任
マスターカードの最高マーケティング&コミュニケーション責任者を12年務めたラジャ・ラジャマナー氏が12月1日付で辞任する。同氏はアジアン・ペインツ、ユニリーバ、シティバンクなどを経て、2013年から現職。世界広告主連盟(WFA)のプレジデントも務めた。著書に『クオンタムマーケティング』(2021年)がある。
後任にはアクセンチュアのジル・クレイマー氏が就任する。DDBやBBDOなどを経て、2016年にアクセンチュアにグローバルブランド担当マネージングディレクターとして入社。2021年からは同社の最高マーケティング&コミュニケーション責任者を務める。
(文:田崎亮子)

