Campaign Asia-Pacific
2016年10月05日

消費者を「立体的に」つかむ ― テンセントに見る、インテリジェントなデータ活用

中国13億人のデータを掘り起こすインターネット界の「巨人」、テンセント。消費者への効果的なアプローチを模索する世界のマーケターたちにとって、同社の広大なエコシステムは現代の「金脈」に違いない。

スティーブン・チャン氏
スティーブン・チャン氏

タイアップ・コンテント

中国以外の人々にとって、今の中国市場の技術レベルやスケールの大きさを肌で感じとることはなかなか難しいのかもしれない。テンセントのバイスプレジデント、スティーブン・チャン氏が「アドテック東京2016」で初講演を行い、中国のモバイル・エコシステムの潜在力について、その識見を日本のマーケターたちに披露した。

テンセントの目覚しい業績の原動力は、何と言ってもモバイルだ。2016年度第2四半期のデータによれば、テンセントのオンラインメディア・プラットフォームのトラフィック及び広告収入は右肩上がりで、そのトラフィックの大半と収入の8割は、モバイル・プラットフォームからもたらされている。「WeChat(微信)」の合計月間アクティブユーザー数(MAU)8.06億に対し、QQの全体のMAUも8.99億と9億に迫る勢いだ。さらに、モバイル端末の動画視聴で中国トップを誇る動画プラットフォームを保有する。

だがチャン氏は、テンセントは「単なるメッセージングサービスの企業ではない」と強調する。最も効果的な手法で消費者にリーチする「テンセント・エコシステム」を構築することが同社の目標であり、マーケターの今後の戦略に大きな影響を与えるだろう、とチャン氏は述べる。

アドテック東京での基調講演後、チャン氏は、「より多くのデジタルコンテンツと、さらに幅広いオフラインからオンラインへのOff2On型サービスにユーザーをつなぐ、総合的なエコシステムを構築しています。金融から市の公共サービス、eコマース、ヘルスケアといったものまでを網羅する、よりユーザーにとって利便性の高いコンテンツやサービスです」とCampaignに語った。

「様々なサービスへの提供が広がっていることで、これまでになく巨大なユーザーデータへのアクセスが可能になりました」。WeChat、QQ、Qzone、デジタルコンテンツ、決済プラットフォームから集められるデータを統合し、テンセントはユーザー個人のより正確な実像を描き出すことができる。それに基づいて、提供するサービスもより高度になった。
「ユーザーに関連性の深い広告コンテンツをチェックし、高い精度でターゲットを定めることが可能です」とチャン氏。さらに、中国のクライアントは、「異なるシステムで異なるニーズに対応する」運用型広告への投資に意欲的だと言う。

この分野におけるAI(人工知能)の役割は大きい。重要なのは、人々の現在の興味の対象だけではなく、未来の興味の対象も探り当てることだと言う。こうした想定がデータ処理で可能になれば、個人のオンライン上の癖を映し出す「立体的プロフィール」作りも可能となる。

テンセントはこの技術を、五輪期間中に行われたコカ・コーラの「ゴールドな瞬間」キャンペーンに取り入れた。様々な人生を彩るハイライトの瞬間をパーソナライズ化したこのキャンペーン、ビックデータの活用により、10日間で1億人以上がコカ・コーラの名が冠された「クロニクル(年代記)」をチェックし、その33%はソーシャルメディア上で共有をした。

またテンセントは、個性的な若者層をターゲットにしたBMWの「X1」モデルの発売時に、音楽プラットフォームのQQMusicを通して1億人の視聴者を集めた。このキャンペーンの主役はライブコンサートだったが、テンセントのリーチはその影響力を遥かに上回った。中でも特筆すべきは、個人データを使って捉えたオーディエンスの的確さ。X1モデルの試乗会に2万3,000人以上が集まったことが、その成果を物語っている。
「ひと昔前は、マーケティングの成功はビッグアイデア(優れたアイデア)にかかっていました。今それが、ビックデータに取ってかわったのです」とチャン氏。「その方がより科学的です。テクノロジーに基づいて行動をとれば、マーケティングの方法は大きく変わるでしょう」。

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