Ryoko Tasaki
2024年8月23日

世界マーケティング短信:マース、「プリングルス」のケラノバ買収へ

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:マース、「プリングルス」のケラノバ買収へ

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

ケラノバ買収 今年の米国企業のM&Aとしては最大規模

スニッカーズやM&M’sで知られる米菓子大手のマース(Mars)が、同業のケラノバ(Kellanova)を買収すると発表した。買収額は360億米ドルで、今年の米国企業のM&Aとしては最大規模となる。

ケラノバは旧ケロッグの事業再編によって、2023年に北米でのシリアル事業を担うWKケロッグと分離。現在ケラノバはプリングルス(ポテトチップス)やチーズイット(クラッカー)などを手掛ける。買収は2025年前半までに完了する見込み。

米国では消費者が安価なプライベートブランドの食品を選ぶ傾向にあり、加工食品業界は苦戦中で、業界再編が活発だ。一方、現バイデン政権は大企業による寡占状態を是正するため、M&Aの規制を強化している。

しかしマース側は、両社の事業は重複する部分が限られており相互補完的であるため、厳しく審査されることはないだろうと予想している。

電通グループ、日本市場のインターネット広告が成長を牽引

電通グループが第2四半期の決算を発表し、売上総利益は2,874億円(前年同期比+11.0%)、オーガニック成長率は+0.2%だった。地域別にみると、日本は二桁成長のインターネット広告が成長を牽引した他、競合案件の勝率が向上したこともあって、1,018億円(同+1.8%)と好調だった。米州は866億円(-3.7%)、欧州・中東・アフリカは681億円(+7.8%)、日本を除くアジア太平洋は294億円(-6.2%)。

取締役 代表執行役 社長 グローバルCEOの五十嵐博氏は、マクロ経済の不確実性が高い中でも「クライアントは事業成長を促進するために、イノベーションとマーケティングに投資を続けていると考えています」とコメント。「クライアントはこれまで以上にインテグレーテッド・グロース・ソリューション(独自の総合型ソリューション)、データとメディアの統合を必要としています。One dentsuのもと、クライアントの事業成長を促進するソリューションを提供してまいります」。

また、同社が今月初めに公開した『統合レポート2024』によると、グループ共通の内部通報窓口「Speak Up@dentsu」に寄せられた通報件数が2023年度は218件で、2022年度(100件)から2倍以上に増加した。主な内容は「社内のハラスメントや不当な扱い、業務における不正、社の制度に関する疑念など」だったという。

同社の広報担当者はCampaignに対し、「当社は声を上げる社員を支援し、この3年間で窓口の認知度が高まったことから、通報件数が増加しました」とコメント。「Speak Upへの通報件数は前年比で増加していますが、健全で倫理的に運営されている企業のグローバルでの基準に十分収まっています」。

世界の6大広告会社「ビッグ6」では他にもWPPとピュブリシス・グループが、内部通報の件数を公開。WPPでは372件(2022年)から612件(2023年)に増加している。

組織改革中のWPP、半年で3000人超を削減

WPPが第2四半期の決算を発表し、収益は38.1億米ドルだった。総合型エージェンシー(グループエム)は前年同期比+1.4%、クリエイティブエージェンシー(AKQA、オグルヴィなど)は同-2.4%。

地域別では、アジア(-5.5%)や英国(-5.3%)がマイナス成長で、特に中国が-24.2%と最も大きく落ち込んだ。一方で北米(+2.0%)、中欧・東欧(+3.4%)、中南米(+2.9%)、中東・アフリカ(+3.3%)、西欧(+0.3%)ではプラス成長を達成した。

WPPではVMLやバーソンの統合、グループエムの簡素化など、組織改革を進めており、昨年末時点で114,173人いた従業員は、半年後に111,000人と3000人以上減少した。マーク・リードCEOがCampaignに語ったところによると、組織の統合で主に上級管理職の役職が削減された他、社員が退職した後に欠員を埋めない「自然減」で人員削減を最小限に抑えたという。

サムスン、五輪表彰台からのセルフィー撮影で新機種が好調

公式パートナーとして五輪を長年支援し続けてきたサムスン(三星電機)が、パリ大会の表彰台で選手たちが最新の折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Flip6」を使って自撮りを撮影する「ビクトリーセルフィー(Victory Selfie)」を実施し、話題になった。自撮り写真は五輪の公式サイトやサムスンのモバイル部門の公式インスタグラムなどでシェアされた。

女子スケートボードのブラジル代表で、スペシャルアンバサダー「チーム・サムスン・ギャラクシー(Team Samsung Galaxy)」のメンバーでもあるライッサ・レアウ選手は「メダル獲得の夢を実現した瞬間を自分の視点で、世界中のファンや家族、友人たちと共有できたのは素晴らしいこと」と語っている。「忘れられない瞬間を盛り上げただけでなく、他のメダリストたちと一緒に表彰台でビクトリーセルフィーを撮影したことで、競争を超えた友情を感じることができました」。

サムスンの英国およびアイルランド担当バイスプレジデント兼モバイル部門責任者を務めるジェームス・キット氏によると、2024パリオリンピック・パラリンピックとのパートナーシップの一環として、Galaxy Z Flip6の五輪限定モデルを約17,000人の出場選手に提供した。「これが当社のユニークな折りたたみスマートフォンの検討や購入の意思を継続的に高め、好調な状態が続いています」。

五輪以外でも記録を次々と更新 WWF

2024パリ五輪の開幕直前に、世界自然保護基金(WWF)が新記録を更新していく様子を収めた60秒の動画を公開した。ただしWWFの動画の中で破られている記録はアスリートの功績ではなく、近年の気温上昇や異常気象のことだ。

実況中継のようなナレーションが「アリーナは熱気に包まれています!」「ギリシャが記録を破りました!」「フランスも参戦!」と伝え、近年の異常気象の様子が映し出される。

このキャンペーンを手掛けたトライ(Try)のコピーライター、ハルヴァード・ヴァーランド氏はこのように語る。「世界中がオリンピックを見守り、アスリートが打ち立てた素晴らしい記録を祝福しています。人々が記録更新に関心を寄せているこの機会を利用し、祝福されるべきでない記録にスポットライトを当てる必要がありました」。


(文:田崎亮子)
 

提供:
Campaign Japan

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