David Blecken
2018年2月07日

楽天はなぜビッグデータマーケティング会社を興したのか

テレビの「責任」をより明確に −− 楽天の掲げる目標は、電通にとっての大きな課題となる。

楽天はなぜビッグデータマーケティング会社を興したのか

楽天と電通のジョイントベンチャーである「楽天データマーケティング会社」(株式保有率は楽天51%、電通49%)が、昨年10月から営業を開始した。同社のEコマースを基盤としたデータコンサルティングには先端技術の粋が期待される。有馬誠・代表取締役社長は、「これまで困難だったテレビの購買行動への影響の計測を可能にしたい」と抱負を語る。

昨今のアマゾンの脅威は、楽天にとっても深刻だ。楽天の中核事業のみならず、メディアやクリエイティブ戦略サービスといった関連分野でもアマゾンは攻勢を強めつつある(特に同社のクリエイティブ戦略サービスの伸びは著しい)。今回の新会社設立に楽天は広告ビジネスの成長を賭ける。端的に言うなら、電通のアカウント管理と販売力によって、楽天は保有する購買客のデータから収益を生み出せるようになるだろう。

グーグルで日本のカントリーマネージャーを務めていた有馬氏は、「データ主導のマーケティングはまだ日本では始まったばかり」と話す。だが日本では、当初からデジタルマーケティングがセールス目的で活用されてきた。そうした状況を過小評価しているようにも聞こえるが、「データサイエンティストを見つけるのは容易ではありません」。楽天データマーケティングは10名の専属スタッフと、楽天・電通から派遣される4〜50名の分野別のサポートスタッフで構成されている。

有馬氏は20年に及ぶキャリアの中で、オンライン、オフラインにおける消費者行動とテレビとの「確かな関係性を示すデータはいまだにお目にかかったことがない」とも話す。

有馬誠氏

「それぞれの分野は進歩しているのに、お互いがリンクしていないのです。広告主の立場からすれば、キャンペーン全体から見たROI(投資利益率)が把握しづらい」

楽天データマーケティングの中枢をなすのは、テレビと接続したインターネットが記録する視聴データと楽天のオンラインショッピングデータ、オフラインのロイヤリティプログラムとのリンク。このシステムは現在も拡張中だ。理論的にはこれら3つの要素の間で消費者をトラッキングすれば、その行動にテレビコマーシャルが影響したかどうかを把握できる。「その結果こそ、広告主が本当に知りたいことなのです」。

こうした話を聞くと、広告界は黎明期からほとんど何も変わっていないのではないかという印象を受ける。例えば花王のような企業のマーケターは「効果が本当にあるのかどうか分からないのに、年間5億米ドル(約660億円)をテレビ広告に支出している」。楽天は試験的に、自社のスーパーセールの広告の四半期における効果測定をした。その結果、テレビ広告を見た視聴者の70%以上がセールにアクセス。更に広告を見た人と見なかった人の購買率を比較したところ、見た人の方が高い数字を示したという。

もちろん、テレビ広告の多くが効果を発揮しているとは言えないだろう。これまで広告効果を開示するよう求められたことがない電通のような企業にとっては、こうした推測はビジネスモデルに反する。

「電通はこれまで巨額の利益をテレビから得てきました。だが今、インターネットがその状況を変えようとしています」。だとしても、まだ電通は過去に軸足を置いたまま、恐る恐るもう片方の足を未来に突っ込もうとしているようなものではないか。「全てのテレビが関わっていることです。多くの人々は変化を恐れますが、同時に我々と一緒に新たな時代を生き抜いていきたい。劇的な変革は必要ないと言いつつも、その一方でより透明性を高めることで変革を牽引したいのです」。

皆が前向きであろうがなかろうが、テレビは確実に変革へと向かっている。4月には日本の5つの主要民放局が、広告枠購入の目安となる視聴率の計測法を「世帯」から「個人」を基準としたものに変える。あるオブザーバーは、「最良のシナリオは、個人の視聴行動と販売時点情報管理のデータとのリンケージが、広告主と小売業者とのインタラクションをより洗練されたものにすること」と予測する。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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