
パワーリスト2025 「APACベストマーケター50」 *CampaignはDoubleVerifyと提携しています |
大谷 由希子
日産自動車
日本マーケティング本部 副本部長
初選出
テスラやBYDといったグローバル企業が参入しているにも関わらず、日産自動車は競争の激しい日本のEV市場においてトップの座を維持している。軽自動車EV「サクラ」の人気を受け、2024年には国内EV販売台数が3年連続ナンバーワンを達成した。
大谷由希子氏は同社の日本マーケティング本部の副本部長として、データ駆動型なアプローチを推進。リアルタイムの消費者インサイトを活用してEV需要の動向をとらえ、国内外の競合企業への関心度をモニタリングし、BYDの日本進出といった市場の変化に迅速に対応することで、ブランド変革を加速させる中心的役割を果たしてきた。その一例として、顧客データ管理をメディアやリテールジャーニーと連携させ、サイロ化されていたリード(見込み顧客)の獲得と育成の流れを一貫した顧客体験へと統合した。
EV需要の高まりを受け、大谷氏は伝説の名車を電気自動車のコンセプトモデルとして蘇らせる「R32EV」プロジェクトを率いた。この取り組みは「R32型スカイラインGT-R」のスピリッツを再現しようと奮闘するエンジニアたちの情熱的なストーリーテリングが、世界的に注目を集めた。感情を揺さぶる物語が持つ力を認識し、内部の有志メンバーが始めた実験的なプロジェクトを、国内外のメディアで記録的なエンゲージメントを達成した注目度の高いブランド・ストーリーテリング・キャンペーンへと発展させたのだ。
日産創立90周年を記念し、大谷氏とそのチームは「日産ラブストーリー」キャンペーンを立ち上げた。Z世代向けの縦型短編動画から、80~90年代の日本の自動車文化を愛するファンのノスタルジアを刺激する動画まで、10種類以上にカスタマイズされた動画コンテンツを制作。それぞれのコンテンツは視聴行動、感情のトリガー、プラットフォームの規範に合わせて最適化した。このキャンペーンは日産のユーチューブ史上で最も高いエンゲージメントを達成し、ブランドイメージを大幅に向上させた。
大谷氏が最も広く影響を与えた功績といえば、異業種間のコラボレーションを促進する新しいモデル「グリーンジャーニー(Green Journey)」プログラムだろう。持続可能性と共創を通じて顧客体験を変革するというミッションのもと、カーボンニュートラルな旅を提供するため鉄道事業者や大手企業14社、官公庁などが連携した。このプログラムによって、大谷氏は業績向上の推進役としてだけでなく、日産のイノベーションやパーパス(企業の存在意義)、社会の発展を結び付ける求心力であることを示した。
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