Rahul Sachitanand
2021年5月21日

フォレスターのCMO、マーケターに部門間の連携強化を提言

パンデミック期間中に、商品購入に至るまでのタッチポイントが平均で17から27へと増加しており、マーケターはすべてのタッチポイントの監視を強化する必要があるだろうと、フォレスターのシャーリー・マクベス氏はいう。

フォレスターのCMO、マーケターに部門間の連携強化を提言

ビジネスの大半がオンライン上で行われ、取引もバーチャルで行われるようになったにもかかわらず、マーケターは、特にB2Bの分野において、販売サイクルの長期化に直面している。コロナ禍で、1つの取引におけるタッチポイントの数が、これまでの17から27に増えたのだ。最高マーケティング責任者(CMO)がこの販売サイクルを短縮するには、これに関与する営業チームや製品チームとの連携を強化する必要があると、調査会社フォレスターでCMOを務めるシャーリー・マクベス氏は指摘する。

マクベス氏はCampaign Asia-Pacificの取材に対し、「驚くようなことではないかもしれないが、パンデミックの影響で購買プロセスは大きく変化し、ますます複雑になっている」として、「成長するには、マーケティングと営業、そして製品開発の各部門がかつてないほど緊密に連携する必要がある」と述べた。

実際、この3つの主要部門の連携がうまくいっている企業は、連携が進んでいない企業よりも成長ペースが19%速く、収益性も15%高いことが、フォレスターの調査で明らかになっている。

とはいえ、各部門を連携することは、言うは易く行うは難し、である。マクベス氏自身も認めているように、マーケターは「需要がどこから来ているのかを追跡して明らかにし、そのインサイトから学ぶという課題に直面」している。CEOはマーケティングチームに、コストセンターからレベニューセンターに移行するよう求めているが、CMOは自らの価値を示すことに苦労している。だが、焦点を絞ることで、CMOは関連する営業部門や製品部門のリーダーとの連携を強化することができると、マクベス氏は述べている。

連携における課題

この3つの部門の連携を強化しようとすると、企業のリーダーはある大きな問題に直面することになる。それはCMOの存在そのものの意義だ。実際、CMOの必要性に対する考え方は、コカ・コーラゼネラル・ミルズなど、企業によっても異なっている。だがマクベス氏は、CMOの役割はますます重要度を増すはずだと考えている。

「我々が今目にしているのは、CMOやマーケティング部門が必要とするインプットの範囲が広がっているという状況だ。マーケティングは、これまで以上に顧客の声を聞き、理解することが求められている。(中略)定量的および定性的な方法で顧客の声を測定することが、今のCMOの責務になっているというのが私の考えだ」と、マクベス氏は語った。

その一方で、CMOはパンデミックのために予算配分の見直しを迫られ、リソースを新規顧客の獲得から既存顧客の維持に振り替えていると、マクベス氏は言う。「既存の顧客を維持することは重要であり、(中略)新しい顧客を獲得するより容易だ。だが、ほとんどの企業のマーケティング部門では、まだその取り組みに注力できる体制になっていない」と、マクベス氏は指摘する。しかし、「予算の20~40%が新規獲得から既存顧客維持にシフト」すれば、状況は変わるかもしれない。

顧客を重視

カスタマーリテンションが優先される新時代において、CMOが注力すべきことの1つが、マクベス氏の言う「カスタマーオブセッション(常に顧客を起点に考える姿勢)」だ。フォレスターによれば、オペレーションやテクノロジー、それに新製品発売時のメッセージを顧客中心に転換した企業は2倍の成功を収め、カスタマーリテンションやブランド認知度も拡大し、その上、従業員の定着率も上昇しているという。

また、CMOが顧客重視のトレンドに対応する方法を探るなかで、B2BとB2Cのマーケティングが交差し始める可能性があると、マクベス氏は考えている。「結局のところ、ターゲットとする顧客は一人の人間であり、彼らは自分がアクセスしたウェブサイトに対して、個人でアクセスした時と同じように反応し、同様の期待を抱いている」と、マクベス氏は言う。「5年前なら、インスタグラムでB2Bの顧客と話をすることはなかったが、今はそうではない。したがって、この交差は実際に起こっているのだと私は思う」

フォレスターの場合

マクベス氏自身も、フォレスターのCMOとしてこのトレンドを追いかけている。「私がフォレスターに入社したのは1年少し前のことだが、その頃は顧客体験を担当する正式な部署がなかった」と、マクベス氏は振り返る。「そこで私は、そのための部署を作り上げた。(中略)私の役割は、顧客が最終的な購買の判断に至るまでの、常に更新されるライフサイクル全体にわたるカスタマージャーニーを推進する方向に変化している」

フォレスターは3月初め、「Forrester Decisions」というリサーチサービスを製品ポートフォリオに追加した。このプロダクトは、シリウスデシジョンズ(SiriusDecisions)の買収によって得たフレームワーク、モデル、手法を、フォレスターのリサーチ能力と組み合わせたサービスとなっている。また、このプロダクトのリリースに合わせ、各社の製品需要を予測するマーケター向けフレームワーク「デマンド・ウォーターフォール」を「レベニュー・ウォーターフォール」に改称し、各社のCMOが収益インパクトをより正確に測定できるようにしたと、マクベス氏は述べている。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

関連する記事

併せて読みたい

22 時間前

大阪・関西万博 日本との関係拡大・強化の好機に

大阪・関西万博の開幕まで1年弱。日本国内では依然、開催の是非について賛否両論が喧しい。それでも「参加は国や企業にとって大きな好機」 −− エデルマン・ジャパン社長がその理由を綴る。

1 日前

エージェンシー・レポートカード2023:カラ

改善の兆しはみられたものの、親会社の組織再編の影響によって、2023年は難しい舵取りを迫られたカラ(Carat)。不安定な状況に直面しつつも、成長を維持した。

2 日前

私たちは皆、持続可能性を前進させる責任を負っている

持続可能性における広告の重要性について記した書籍の共著者マット・ボーン氏とセバスチャン・マンデン氏は2024年のアースデイに先立ち、立ち止まっている場合ではないと警告する。

2024年4月19日

世界マーケティング短信: オープンAI、アジア初の拠点を都内に設立

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。