Staff Reporters
2025年5月29日

パワーリスト2025:岡本達也(味の素)

味の素がBtoBtoCブランドから、消費者と直接的な関係を築く企業へと移行していく中、岡本達也氏はマーケティングアプローチの活性化の指揮を執る。

パワーリスト2025:岡本達也(味の素)
パワーリスト2025
「APACベストマーケター50」
*CampaignはDoubleVerifyと提携しています

岡本達也 

味の素
食品事業本部 副事業本部長、マーケティングデザインセンター長

2024年より2年連続で選出

果敢に挑戦することを意味する「Swing the Bat(バットを振る)」というフレーズからは、味の素よりもスポーツブランドを連想しやすいだろう。しかし岡本氏はこの言葉の哲学的基盤を、大企業によくある停滞や、価値提案を怠る傾向への警鐘として採り入れた。社内にチャレンジ精神を育み、「狙いすましてフルスイングする」個人やプロジェクトを、成否や規模にかかわらず称賛する文化を構築。味の素はこのアプローチを正式に制度化し、複数のエントリーの中から3~4つのプロジェクトを表彰する「Swing The Bat」を半年に一回開催している。

リスクを恐れない姿勢は、味の素のマーケティング全体にも表れている。近年は、冷凍餃子がフライパンに張り付かないよう改善するため、消費者から3,500個を超えるフライパンを集めた型破りなアプローチが大きな話題に。一消費者の声に真摯に応えたPRは、スパイクスアジアの金賞などさまざまな賞を獲得した。

現在、同社はDtoC部門を立ち上げて積極的なマーケティング活動を行い、BtoBtoCモデルの変革を進めている。現在はマスメディア主導のコミュニケーションよりも、消費者とのパーソナライズされたインタラクションに注力する。

他企業に原料を供給するBtoBブランドとして知られる味の素だが、インフルエンサーの力を活用するため、アンバサダープログラム「あじふれんず」を立ち上げた。インフルエンサーの起用にあたっては、専門のエージェンシーに頼らずに直接アプローチし、味の素に対してファンにポジティブな印象を持ってもらうことを目指す。同社を支持するインフルエンサーは1000人に上り、岡本氏とチームの発案によるこのマーケティングアプローチは、主にBtoB製品を扱う企業としては珍しい。

他にも注目すべきマーケティング施策として、オイスターソースを使ったそうめん専門店を渋谷に期間限定でオープンした。扱いが難しいというイメージを払拭し、手軽で便利に使えることをアピール。さまざまな場所でポップアップストアを展開し、オイスターソースの認知度と関心を高めている。

岡本氏のリーダーシップの下、味の素はますます注目を集め、材料供給企業から独自ブランドの構築という難しい移行を進めている。

パワーリスト2025
「APACベストマーケター50」
*CampaignはDoubleVerifyと提携しています

 

関連する記事

併せて読みたい

16 時間前

世界マーケティング短信:広告制作の完全自動化を目指すメタ

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

2 日前

パワーリスト2025:足立光 (ファミリーマート)

足立氏のリーダーシップの下、ファミリーマートは42カ月連続で売上成長を実現。斬新なキャンペーンやコラボレーションで、ブランド認知度も向上を続ける。

3 日前

パワーリスト2025:大谷由希子(日産自動車)

データ駆動型のストーリーテリング、レガシーの再構築、そしてサステナビリティーを軸とした異業種間の協業を推進することで、大谷由希子氏は日産のブランド変革を牽引する。

3 日前

パワーリスト2025:「APACベストマーケター50」に選ばれた日本人

Campaign Asia-Pacificが毎年、アジア太平洋地域(APAC)の傑出したマーケターを選ぶ「パワーリスト(Power List)」。今年は日本から4名が選出された。